今年前半、伊藤忠商事の株価が三井物産のそれを100円ほど、ずっと上回ってきた。ところが、米空売りファンド、グラウカス・リサーチ・グループが7月27日、伊藤忠株を「強い売り推奨」するリポートを公表したため、同日午前中に一時、126円50銭(10.0%)安の1135円50銭まで下落。年初来の安値を更新し、三井物産の逆転を許した。
それから4カ月弱経ち、伊藤忠の株価は11月28日に1581.5円をつけ、年初来の高値となった。10月21日以降、“トランプ・ショック”の11月9日を除き、ほぼ連日、前日比で上昇を続け、グラウカスの売り叩き作戦を跳ね返した。グラウカスの売りの仕掛けは失敗に終わったようだ。
だが、まだ株価逆転の予兆はある。11月22日の東京市場の終値を比較すると、伊藤忠は1520.5円(12.5円高)で、三井物産は1510.5円(12.0円高)だった。三井物産のこの日の高値は1514.0円だ。なお、三井物産も28日に1555.0円となり、年初来の高値をつけたが、同日の高値で比較しても伊藤忠が26.5円上回った。
しばらくデッドヒートを演じながら、2017年3月末までに決着がつくのではないかと、アナリストは予測する。
非資源部門の稼ぐ力
伊藤忠の岡藤正広社長の「社長力」を評価する声が高い。非資源部門の稼ぐ力が安定しているのも強みだ。
対する三井物産は、依然として資源の権益漁りを続けている。16年3月期決算で会社創立以来初めて834億円の最終赤字に転落したが、経営は柔軟性に欠ける。飯島彰己会長と安永竜夫社長の二頭立ての馬車だ。伊藤忠は岡藤社長が陣頭指揮を執る一極集中だ。意思決定の速さでも伊藤忠が勝る。
同じく1494億円の赤字に沈んだ三菱商事は小林健社長が退任し、垣内威彦氏が社長に昇格、経営トップを一新した。三菱商事は資源に頼らなくても利益を上げられる体制づくりを急ぐ。
川下の小売り分野でも、伊藤忠が三井物産に先んじている。
伊藤忠は9月1日時点で33.4%だったユニー・ファミリーマートホールディングスの出資比率を引き上げ、最大38%とする。投資額は400億円規模になる見込みだ。
伊藤忠はユニーグループ・ホールディングスと経営統合する前のファミリーマートに37%出資していたが、経営統合で持ち株比率が下がった。これを統合前の水準に戻し、ファミマに対して発言力を高め、親会社として経営のグリップを強くする。
総合商社の川下戦略では、17年1月をメドに三菱商事がローソンをTOB(株式公開買い付け)で子会社にする計画だ。