本連載前回記事では、障害者雇用の枠で大手企業B社に入社したAさんが、職場でハラスメント的な言動を受け精神疾患となり、人事部の障害者雇用担当者に労災申請の意思を伝えたところ、「なぜ労災申請するんですか? なぜですか?」「労災が認められなかったら訴訟ですか?」などと暴言を吐かれた事例を紹介した。ちなみにAさんは障害者虐待防止法に則った通報を行ったが、会社側はAさんに契約期間の変更を一方的に通告してきた。
Aさんの場合、入社当時の報酬は手取りで月額16万円だったが、障害者雇用で働く人たちに確認したところ、「これでももらえているほうだ」という声が多かった。障害者雇用の現場においては、いくら経験を積んでも昇給がない状態なども当たり前であり、「こんなに闇が深いとは思っていなかった」とAさんは語る。
会社によっては、障害年金が支給されることをアテにしたうえで、あえて低い給与体系を設定しているところもあるという。これでは「障害者の自立」というお題目はまるで空しい掛け声だけに聞こえてしまう。
別の大手証券会社では、障害者枠で採用された社員だけ、本社とは別の雑居ビルに隔離されて勤務しているという実態がある。また、障害者雇用にまつわる助成金は2年間たつと受給できなくなるため、「体調に問題があるから」といった理由をつけて、ちょうど2年になるタイミングで雇い止めとなるケースも多い。
巧妙なケースでは、「3年継続勤務すれば正社員になれる」という前提で入社したのに、3年目になるタイミングで人事制度が変わり、「基幹職の仕事ができていないと正社員になれない」というルールが設けられた、などという事例もあった。
企業が取り組むべき課題
2013年度の内閣府調査によると、身体障害、知的障害、精神障害の3区分における障害者数は、身体障害者366万3000人、知的障害者54万7000人、精神障害者320万1000人となっている。これを人口1,000人当たり人数に置き換えると、身体障害者29人、知的障害者は4人、精神障害者は25人となる。概算で、日本国民の約6%がなんらかの障害を有していると考えていいだろう。統計数値を見る限り、これまで障害者数は増加傾向にあるため、この数と割合は今後も増えていくことが予想される。