ボーナスシーズンがやってきた。大手企業を対象とした11月4日現在の日本経済団体連合会(経団連)の調査によると、71社の妥結額の総平均は92万7892円で、前年比0.84%増となった。
では、中小企業を含めた数字はどうなっているだろうか。11月24日現在の東京都産業労働局の調査によると、従業員300人未満の企業の平均額は約66万8000円。300人以上1000人未満の企業は約61万8000円。1000人以上の企業は約81万円となっている。
この調査で目を引いたのは、建設業の大盤振る舞いだ。全規模平均でなんと約91万8000円。前年比で11%もの大幅アップである。2020年の東京五輪に向けた建設特需で潤っているのだろう。零細企業の労働者やフリーランスの人からすると、なんとも羨ましい話である。
そんなボーナス時期の12月6日、毎日新聞が『群馬が物価安日本一 東京より1割低く 15年総務省調査』という記事を掲載した。総務省が15年に行った「小売物価統計調査(構造編)」の結果をベースにしたものだ。調査結果そのものは9月に発表されたもので旧聞に属するが、おカネに敏感になる時期だけに、あらためてその中身を検証してみた。
意外に物価が高い山形県
総務省の調査に用いられているのは、「消費者物価地域差指数」というもので、全国の物価水準を100として、各地域と比較している。
都道府県別の総合物価水準をみると、全国平均以上の都道府県の数は11都府県あり、前年の9都府県から増加した。もっとも高いのは東京で104.0。次いで神奈川(103.5)、埼玉(101.7)、兵庫(101.1)、山形(100.8)の順になっている。
一方、もっとも低いのは群馬、宮崎が96.4で並んだ。次いで鹿児島(96.7)、岐阜(97.0)、佐賀(97.2)と続く。東京は群馬、宮崎よりも7.9%高いという結果となった。
物価高上位の4都県については意外性はないが、5番目の山形には驚く向きも多いかもしれない。
何が山形の物価水準を押し上げているのか。同調査では、「食料」「住居」「光熱・水道」「保健医療」など10大費目別の指数も取り上げている。
「その分析によると、山形の物価水準が全国平均を上回った要因のうち、もっとも影響が大きかったのは光熱・水道で、0.92ポイント押し上げる結果となっています。光熱・水道の物価水準は寒冷地の北海道が112.4でもっとも高いが、雪が多くて寒い山形も光熱費が物価を押し上げているのは間違いありません。さらに注目すべきは水道代です。山形の水道代は以前から全国有数の高さだと知られています。人口密度と浄水場などの設備コストとの関係が、その原因だと指摘されています」(経済ジャーナリスト)
費目別で都道府県の最大格差は「住居」
「住居」の高さは東京がダントツで128.0。もっとも安い北海道(82.7)の1.55倍となっている。札幌の街では、「札幌駅から徒歩7分 1LDK・38平米 5万9000円」という驚愕の賃貸住宅もある。1Kの単身者用なら4万円前後からある。都内で似たような条件で探してみると、「新宿駅から徒歩10分 1K・30平米 9万8000円」という物件があった。都内のほうが狭いにもかかわらず、家賃は約1.7倍である。東京の住居コストの高さにはあきれてしまう。
住居以外の主な費目指数で、もっとも高い県と低い件を比べてみよう。
【食料】高い…石川(103.3)、低い…長野(94.2)
【光熱・水道】高い…北海道(112.4)、低い…福井(90.8)
【家具・家事用品】高い…福井(112.1)、低い…鹿児島(93.2)
【被服及び履物】高い…栃木(115.6)、低い…鹿児島(91.4)
【保健医療】高い…山口(103.5)、低い…大分(97.2)
【交通・通信】高い…神奈川(103.9)、低い…岡山(96.3)
【教育】高い…大阪(113.5)、低い…群馬(79.3)
ちなみに、『全47都道府県幸福度ランキング2016年版』(日本総合研究所)でトップになった福井の物価水準は99.7で全体の15番目だ。
地域別にみると、物価が高いのは関東や近畿で、安いのは九州・沖縄となっている。今後、東京五輪に向けてインフラ整備のための建設ラッシュや、インバウンド増加に伴うホテル需要の高まりなどで、東京を中心に首都圏の物価水準はますます高くなりそうだ。
人生半ばでの移住や定年後の田舎暮らしを考えている人にとって、この物価水準の調査はひとつのヒントになるだろう。
ただし、光熱・水道代に代表されるように、地方だからといって物価が安いというわけではないことは肝に銘じておきたい。
(文=編集部)