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ユナイテッドアローズとアダストリア、燻る経営統合の観測…前澤友作氏が主導か

文=編集部
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ユナイテッドアローズの店舗(「Wikipedia」より)

 ファッション通販サイト「ZOZO」の創業者で前社長の前澤友作氏が、大手アパレルのユナイテッドアローズアダストリアの大株主になった。ユナイテッドアローズの株式7.97%を約35億円、アダストリアの株式5.60%を約40億円でそれぞれ取得した。

 今回の株式取得により、ユナイテッドアローズでは創業者で名誉会長の重松理氏(持ち株比率8.24%=20年3月末時点)に次ぐ第2位の大株主。アダストリアでは主要取引先である豊島(同4.20%=20年2月末時点)を抜き、オーナーの福田三千男会長の資産管理会社フクゾウ(同34.41%)に次ぐ第2位の大株主になったことになる。

 前澤氏は1998年にZOZOの前身となる輸入レコードやCDのカタログ販売会社を設立。2000年からファッション通販に進出。04年にゾゾタウンを開設し、セレクトショップや大手衣料品を取り扱う通販サイトとして若者を中心に人気を集めた。19年、Zホールディングス(旧ヤフー、保有比率49.08%=20年3月末時点)の傘下に入った。前澤氏は社長を退任したが、現在でも17.51%を有する第2位の株主である。

75億円の投資は2社への恩返し

 前澤氏は8月13日、TBS系ドラマ『半沢直樹』の名セリフを引き合いに出し、「施されたら、施し返す。恩返しです」とツイートした。両社ともゾゾタウンで売上上位を占める有力取引先だ。特にユナイテッドアローズは、重松氏がゾゾタウンの黎明(れいめい)期から前澤氏を支援。ファッション衣料をネットで売ることに抵抗感が強かった企業・ブランドの出店を促す役割を果たした。以来、前澤氏と重松氏は旧知の間柄といわれるようになった。

 新型コロナウイルスの感染拡大が進むなか、アパレル業界は大打撃を被った。前澤氏のツイートに対して、ツイッター上では逆風にあえぐユナイテッドアローズとアダストリアに「投資のかたちで“恩返し”した」と大盛り上がりだった。ユナイテッドアローズ、アダストリアは株価の低迷が続いた。8月13日時点の時価総額はユナイテッドアローズが403億円、アダストリアが785億円。前澤氏がZOZOの代表取締役社長を退任した昨年9月12日からユナイテッドアローズは約180億円、アダストリアは約368億円ほど時価総額が目減りした。前澤氏が投資したとの情報が流れると、両社の株価は一時的に上昇した。

 もとより、「恩返し」というきれいごとだけで投資したわけではない。大量保有報告書には保有目的として「純投資を基本とするが、発行者経営陣との間で、友好的な関係を構築されることを前提として、必要に応じて、企業価値向上のための助言又は提案を(経営陣に対して)行う可能性がある」と記載されている。前澤氏は何を提案しようとしているのか。

株式投資で44億円の損失

 前澤氏は9月6日、自身のツイッターを更新。株式投資で44億円の損失を出したことを明かした。「このコロナ禍で乱高下する株式市場に目が眩み、慣れない短気売買を繰り返した結果、株式投資で44億円の損失を出してしまったことをここに報告します」と綴った。株式投資失敗の詳細はわからない。「損失額の大きさから信用取引をしていたのではないか」(兜町筋)との見立てが成り立つ。

 昨年9月、スタートトゥデイを立ち上げた。ZOZOの旧社名と同じである。前澤氏の資金力、人脈をフル活用し、社会的課題の解決にまで踏み込んだ事業を目指す、としている。新会社での初仕事が株式投資となったわけだ。ユナイテッドアローズアダストリアに出資した。

 ユナイテッドアローズは「ユナイテッドアローズ」「ビューティ&ユース」「スティーブンアラン」などのセレクトショップや、カジュアルSPA「グリーンレーベルリラクシング」「コーエン」などを手がけ、売上高は1574億円(20年3月期)。EC売上高は292億円、EC化率は22.6%だ。一方、アダストリアは「グローバルワーク」「ニコアンド」「ローリーズファーム」「スタディオクリップ」「ジーナシス」などのブランドを持つカジュアルSPAで、売上高は2223億円(20年2月期)。EC売上高は436億円(国内)でEC化比率は20.5%。

 ユナイテッドアローズの20年4~6月期決算の売上高は前年同期比40.8%減の221億円に激減、純損益段階で35億円の赤字(前年同期は19億円の黒字)に転落した。4~6月期に赤字を計上したのは、02年の上場以来初めてのことだ。アダストリアも同様。20年3~5月期決算の売上高は40.9%減の332億円、純損益は36億円の赤字(同32億円の黒字)である。

 前澤氏は、両社に経営統合を提案するという見方が広まっている。かつて、アダストリア(当時の社名はポイント)がユナイテッドアローズに経営統合を持ち掛けたことがあった。コロナ禍で業績が落ち込み、株価も低空飛行をする両社に前澤氏が経営統合を提案し、「統合新会社の筆頭株主に前澤氏が就くのではないか」(ファッション業界を担当するアナリスト)との観測が流れる。

 ところが前澤氏が、軍資金を稼ぐための株式投資で44億円の巨額損失を出してしまった。ファッションのネット通販で成功した前澤氏は、投資家への転身を図ったが、出足でつまづいた。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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