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小林敬幸「ビジネスのホント」

渋谷の奇跡、一見客にも「優しい」のんべえ横丁が楽しすぎる!究極の歩き方ガイド

文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者

・ひとりでも、一見さんでもOK

 店同士の仲の良い優しい雰囲気が、お店の中のお客さん同士にも伝染しているように感じる。ほとんどの店では、ひとりでも初めて行く店でも問題ない。新宿ゴールデン街となると、常連客についていかないとなかなか入りにくいし、センスが高くないと受け入れてもらえないように感じて敷居が高い。しかし、渋谷ののんべい横丁は、初心者にも優しい。

・常連客のつくる雰囲気

 おっかなびっくり初めて行っても、どの店にも必ずいる常連客が、緊張しているこちらに気を使って話しかけてくれたりする。

 ある店では、店主が病気になったので、常連客が曜日交替でカウンターの中に入って運営をサポートしていた。資格も取ったという料理の腕も、大したものだ。そういえば、冒頭で紹介した「のんべい横丁サイト」も、ウェブ制作会社を経営する常連客が、ボランティアでつくった。ところが、横丁の店の人で、管理者の連絡先を知らない人がいたので、私が教えてあげたこともある。なんともゆるい街だ。

・「Since 1950」の歴史

 戦後の混乱が残る1950年に、渋谷のあちこちにあった屋台をまとめて整備したときのひとつがこののんべい横丁の始まりだ。そのときに始めた人は、今や90歳以上になっているので、ほとんどが代替わりして、オーナーの子供の世代が中心だ。また、オーナーさんかその子供世代から店を借りて運営している若いマスターも多い。

 北島三郎が3曲100円で流しをしていた時代もあったそうで、北海道の北島三郎記念館に当時ののんべい横丁が再現されている。

 実は、一見さんにも優しく、店同士も仲良くなったのは、この10年くらいだという人もいる。バブルの頃はオーナーも若く店も儲かっていて元気一杯だったので、店同士のいさかいなどもあったという。有名人の常連客だけを相手にする店もあり、今ほど一見客に優しい店は多くなかったらしい。

 立ち退きさせられる整備計画があるのかと、いくつかの店で尋ねたところ、外国人観光客に大変な人気なので、2020年の東京オリンピックまでは、なくすわけにはいかないだろうとのこと。確かに、渋谷ヒカリエの公演に来たブロードウェイの役者さんたちも通っている。店によっては、外国人客の相手を煩わしく思っているところもあるようだが、今となっては、外国人客が横丁の生命線かもしれない。

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

1962年生まれ。1986年東京大学法学部卒業後、2016年までの30年間、三井物産株式会社に勤務。「お台場の観覧車」、ライフネット生命保険の起業、リクルート社との資本業務提携などを担当。著書に『ビジネスをつくる仕事』(講談社現代新書)、『自分の頭で判断する技術』(角川書店)など。現在、日系大手メーカーに勤務しIoT領域における新規事業を担当。

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