米国のローカル航空会社向けの受注契約の内訳は、スカイウエストが200機、トランス・ステイツ航空が100機、イースタン航空が40機、航空機リース会社のエアロリースが20機となっている。つまり、米国の重量制限をクリアしなければ、受注している447機のうち、これら360機がキャンセルになる恐れがあるということだ。
そのため、三菱重工が設計をやり直して、5度目の納入を延期した本当の理由は、米国のエアライン対策ではないかとの見方が強まっている。
三菱航空機は債務超過に
相次ぐ納入延期によって、MRJの開発費用は大きく膨らむ。宮永氏は会見で3000~4000億円とみられていた開発コストについて、「3~4割増える」との見通しを明らかにした。開発当初は1500~1800億円と見積もっていたが、およそ3倍に膨らみ、5000億円を超える可能性すらあることを示唆した。
三菱航空機の16年3月期の決算公告によると、資本金は500億円、資本剰余金は500億円である。これに対して利益剰余金は998億9600万円の赤字で16年7月に債務超過になったと公表した。64%を出資する三菱重工が、不足資金を毎月支給しているという。
三菱航空機は設立以来、赤字経営が続き、当期純損失が毎年積み上がってきた。当期純損失は14年3月期が94億500万円、15年3月期に177億1500万円、16年3月期になると305億2200万円になった。
受注した447機の引き渡し予定は、18年以降、順次やってくる。納期遅れによる違約金の支払いが発生するようになると、赤字は一段と膨れ上がる。
三菱重工の16年4~9月期の連結決算の最終損益は189億円の赤字(前年同期は433億円の黒字)だった。4~9月期で最終赤字に転落するのは7年ぶりで、大型客船事業に関連した特別損失を計上したことが響いた。
三菱重工は大型客船でも設計遅れや仕様変更を繰り返し巨額の赤字を計上したが、MRJも似たような経緯をたどっている。三菱重工が社運を賭けたMRJは大型客船同様、失敗に終わる懸念が少しずつ高まってきている。
三菱航空機、5人目の社長交代
三菱航空機は2月2日、次期社長に三菱重工から水谷久和・常務執行役員を迎える人事を発表した。発効は4月1日付で、森本浩通社長は3月31日付で退任する。人心を一新して、20年半ばのMRJの初号機納入に挑む。