三菱航空機は1月31日、国産初のジェット旅客機、三菱リージョナルジェット(MRJ)の開発状況をまとめた動画を公開した。3分41秒の動画では、初号機の北米へのフライトの様子などを紹介している。
開発が順調に進んでいることをPRしたかったのだろうが、MRJは本当に離陸するのだろうか。5度の納入延期でMRJ事業が被るダメージは計り知れない。
親会社の三菱重工業は1月23日、2018年半ばを目指していたMRJの航空会社への納入開始を、20年半ばに2年延期すると発表した。延期はこれで5度目で、当初の予定から7年遅れとなる。
三菱重工の宮永俊一社長は開発が遅れる理由について、「最高水準の安全性能を国際的に説明できるようにするには、設計の変更が必要だと判断した」と会見で述べた。20年半ばに納入するには、逆算すると19年末までに型式証明を取得しなければならない。
MRJは15年11月の初飛行以来、3機が米国で飛行試験を行っており、この1年程度で飛行時間は400時間を超えている。飛行試験は2500時間を予定していたが、今回の設計変更で、一からやり直さなければならなくなる。19年末までに型式証明を取得するには、日程はかなりタイトである。
大量キャンセルの危機
MRJは当初、13年に全日本空輸(ANA)に初号機を納入する計画だった。それが納入延期を繰り返し、今度は20年半ばとしたが、守れるのか疑問視する向きも多い。
MRJは現在、447機を受注している。だが、これだけ納期が遅れるとキャンセルされる可能性も高まる。
米航空専門誌「アビエーション・ウィーク」(16年7月25日号)は、MRJを200機(キャンセル可能の100機を含む)契約している米スカイウエスト航空が、カナダの小型航空機メーカー、ボンバルディア社と航空機整備の10年間の延長契約を結んだと報じた。
同誌は、スカイウエストがパイロット労組と協定を結んでいる機体の重量制限をMRJが満たしていないため、ボンバルディア社に変更するための布石を打ったと伝えた。スカイウエストはMRJが納入されない場合に備えてボンバルディア社に保険を掛けたということだ。
MRJは当初、米国の航空会社の仕様に合わせてきたが、その後に発生した開発上の問題を克服する過程で機体の重量超過が発生した。米国向けの条件を満たさなければ、米国市場で販売できない可能性がでてきた。