東京都内で「410円タクシー」が始まり、3週間がたった。これは、1月30日から東京23区、三鷹市、武蔵野市を営業地域とするタクシーの初乗り運賃が「2km730円」から「1.052km410円」に引き下げられたものだ。
“ちょい乗り”を促進して乗客を増やそうという施策だが、実際のところ「運賃改定前と営業収入は変わらない」というのが、多くのタクシー運転手の実感だ。運転手の声をいくつか紹介しよう。
「勝どき周辺のタワーマンションから東銀座駅まで行っていた客が、勝どき駅で降りるようになったね。メーターが上がるのを見越して『410円で止めて』なんて客もいるよ」(都内のタクシー運転手)
730円のときは「行ける限り遠くへ」だった乗客が、410円になったら「ここでいいや」となったそうだ。別の運転手は、こう語る。
「730円未満のお客さんは、平均して1日6人ほどです。410円が2人ぐらいで、それ以上730円未満が4人ぐらい。410円のお客さんが連続すると、一時的には売り上げがガクッと落ち込みますが、トータルで見ると、それほどの減収ではないですよ。“行ってこい”ですね」
それもそのはず。新運賃は410円で“ちょい乗り”を増やした半面、約6.5km以上乗る場合は以前よりも割高になる仕組みで、いわば「値下げと見せかけた値上げ」でもあるからだ。
それでも、タクシーを使う人は以前と変わらずに使う。特に都心部は「会社の金」で乗る人が多く、移動の交通費が50円上がろうと100円上がろうと、自分の懐は痛まないからだ。もちろん、自腹で乗る人も少なくないが、タクシーを利用するのは「金銭的余裕がある」か「タクシーでなければ移動できない」という人である。そのため、多少の値上げは気にならずにタクシー移動を選ぶわけだ。
410円タクシーは合法白タク潰し?
また、今回運賃が改定された理由のひとつに「白タク導入」がある。
1年ほど前、スマートフォンのGPS機能で現在地を取得し、付近の登録ドライバー(一般車)に配車を依頼する、配車アプリ「Uber」を駆使した有料配車サービスが話題になった。「アプリに登録してくれたら配車します」という「合法白タク」システムにより、タクシーがつかまらない過疎地の交通網を充実させようというものだった。
タクシー業界は猛反発したが、2016年3月に一部合法化が閣議決定されたため、危機感を募らせた東京のタクシー業界が「合法白タクを潰すべく、運賃を改定した」という側面もあったわけだ。