西武vsサーベラス全面対決に突入 球団売却提案などでサーベラスは四面楚歌
(「Wikipedia」より)
西武HDは3月26日に取締役会を開き、筆頭株主の米投資会社、サーベラスが進めている株式公開買い付けに反対することを決めた。
後藤高志社長は会見で、サーベラスが2012年10月、経営改革の取り組みを文書で提案していたことを明らかにした。西武鉄道の西武秩父線、多摩川線、国分寺線など5路線の廃止や、埼玉西武ライオンズ球団の売却などが含まれていた。西武HDはいずれの提案も拒否した。
サーベラスは、五味廣文・元金融庁長官ら3人をも取締役に加えるよう、今年6月の株主総会で提案する方針。後藤社長はこの提案も「(この3人が)サーベラスの意向を受けている可能性を否定できず、株主と西武HDにとって望ましくない」と反対する意向を明らかにした。
これに対してサーベラス日本法人の鈴木喜輝社長は27日、都内で会見し、西武鉄道の路線廃止や埼玉西武ライオンズの球団売却については、「(経営改革の)アイデアの一つの項目として示した」と説明。「まったくこだわりはない」と述べ、今後も要求する考えはないと明言した。そして、「TOBを成立させた上で、できるだけ早期に上場したい」と語った。早期に上場させるという点では西武HD、サーベラスは一致している。
4月下旬が期限のTOBが成立するのはほぼ確実だ。4%を積み増すだけなので、個人株主がTOBに応じるとみられているからだ。議決権ベースで現在の32.44%から36.44%を上限に買い増すことができれば、株式の保有比率は3分の1を超える。そうなれば、合併や事業譲渡など株主総会の特別決議の拒否権を握ることになる。その後は、6月に予定する株主総会での取締役選任が焦点になる。選任には総会で過半数の賛成が必要で、委任状争奪戦(プロキシファイト)に発展する可能性が高い。
しかしサーベラスに勝ち目はないだろう。西武HDの大株主で主力取引銀行の、みずほコーポレート銀行は、サーベラスの提案に反対する見通しだ。「路線の廃止や球団売却を示したことは勇み足。これでサーベラスに味方する株主はいなくなった」(証券アナリスト)
株主や路線の利用者など「すべてのステークホルダー(利害関係者)のために」という思いは共通しているはずなのに、米国流の企業価値の向上と、日本流の公共性の優先という主張が鋭く対立しているわけだ。収益性と公共性のどちらを重視するのかという論争なのに、争点が路線の廃止や球団売却は是か非かになってしまった。サーベラスは情報戦で負けた。
TOB価格についても、西武側が考えている再上場の時の売り出し価格(1200円)に200円を上乗せしただけの1400円。「1200円では安すぎる」と主張してきたサーベラスの姿勢に一貫性があるとはいえない。1万人を超える個人株主がどのように判断するだろうか。
(文=編集部)