少子高齢化が進んだ現在、さまざまな業界で「高齢者の顧客化」が経営課題のひとつとなっている。健康食品やスポーツクラブのように中高年世代に支えられる業界もあり、外食業でも高齢客の獲得が売り上げ拡大に欠かせなくなってきた。若者向け以外の飲食店では、お客が減る時間帯(アイドルタイム)に訪れてくれる高齢客はありがたい存在だ。
高齢客への訴求は、これまで現役を退き年金生活となった収入減を考慮して、どの業界でも「シニア割引」サービスが主体だった。だが最近は、違う角度からの取り組みも始まっている。今回は「ロイヤルホスト」や「天丼てんや」を運営するロイヤルホールディングス(以下、ロイヤルHD)の活動を参考に、シニア世代の消費者意識を分析したい。
「60グラムの黒毛和牛」が大人気
ロイヤルホスト(以下、ロイホ)では、昨年12月6日から今年2月下旬まで開催した期間限定の「美味しさ満喫 冬のご馳走 蟹とステーキ」フェアが好調だった。スタート直後から「想定以上のご注文をいただき、一時は材料調達が心配になるほど」(ロイヤルHD広報)だったという。年末年始をはじめ、家族や親戚、友人・知人と語り合う機会が多い時季に向けて、国産黒毛和牛や米国産牛、ずわい蟹やたらば蟹などの上質な食材を独自の調理法で訴求した。もちろん同フェアは、すべての来店客に向けたものだが、興味深い傾向があった。
たとえば「黒毛和牛ZEN」という、和牛ステーキご飯&海老と帆立のあつあつグリルのセット(税込2678円)では、高齢客からの注文も目立ったという。「黒毛和牛のステーキとしては久しぶりの提供でした。上質な肉で60グラムという分量ですが、各店にいるコックが丁寧に調理する当店の強みが、高齢のお客様にもご評価いただけたと考えています」(同)
筆者は先月、競合のステーキチェーン店で食事をしたが、平日日中の店内は高齢男性がひとりで食事をする姿が目立ち、隣席の男性客は初めての来店だと話した。ベテラン店員に聞くと「平日は高齢客が多く、少ない分量のステーキやハンバーグを頼む人が多い」そうだ。
ビジネス現場では「現在の高齢者は昔とは生活習慣が違う」といわれ、元気な退職世代は現役世代と変わらない生活を楽しむ。ただし、食事では総じて食べる量が少なくなる。日本の食生活の欧米化が進んだのは戦後の高度成長期で、1971年に1号店が開店したロイホは今年で46年たつ。創業当時の若者も高齢者になったわけだ。