孫社長の米国での投資・雇用計画
米国での投資・雇用計画を時系列で追ってみよう。
トランプ会談直後の12月19日、ソフトバンクはワンウェブに10億ドル(1100億円)を出資し、40%の筆頭株主になると発表した。
ワンウェブは、欧州航空・防衛大手のエアバス・グループと合弁会社を設立することを決定しており、今後10年間に、フロリダの工場で高速・低価格(一基100万ドル以下)の640基のインターネット通信衛星を製造して、これを打ち上げる。地球上のあらゆる車体・建物からインターネット通信のアクセスを可能にすることを狙っている。2025年までに通信契約者数、1億人の獲得を目指す。今回の投資はエンジニア、製造、サポート業務で3000人の雇用を生むとしている。
トランプ氏は12月28日、ソフトバンク傘下の米携帯電話大手スプリントなど2社が国内で新たに8000人を雇用する計画を明らかにしたとして、「マサ(孫氏)に感謝する」と述べた。
2月15日、ソフトバンクは米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループを33億ドル(約3600億円)で買収すると発表した。フォートレスは16年9月末時点で701億ドル(約7兆7000億円)の運用資産を持ち、不動産やベンチャー投資で実績をあげている。フォートレスの買収で、ソフトバンクはベンチャー投資を加速させる。
1000億ドルの新ファンドとフォートレス・インベストメントでは、利害の対立は避けられないだろう。有利な投資案件は、どちらも自分のほうで押さえたいはずだ。新ファンドの出資者、たとえばサウジ政府系ファンドとフォートレスの利益相反は、すぐにでも表面化する可能性がある。
2月28日、ワンウェブと米通信衛星サービス大手インテルサットが合併することで合意したと発表した。ソフトバンクは一歩進めて、17億ドル(約1900億円)を合併後の新会社に出資することになるという。
インテルサットは航空機や船舶向けの静止衛星を手掛けるが、巨額の負債が経営を圧迫していた。ソフトバンクの出資比率は39.9%となり、保有株式は新ファンドに移す。
トランプ政権の誕生を好機到来と判断し、孫氏は米国への投資に強くアクセルを踏み込むつもりだ。