3月1日の東京株式市場で、ソフトバンクグループ株が買われた。終値は前日比221円(2.64%)高の8583円。取引時間中に、ドナルド・トランプ米大統領の議会演説で米国雇用増に貢献した企業としてソフトバンクグループの名前が挙がったことが伝わり、米国事業に追い風となるとの観測が広がったためだ。
孫正義社長は昨年12月6日、トランプ・タワーでトランプ氏と会談し、4年以内に500億ドル(約5兆5000億円)を米国内に投資し、5万人の雇用を創出すると約束した。上機嫌のトランプ氏は孫氏を1階のロビーまで見送った。
ソフトバンクは、サウジアラビア政府系ファンドと共同で1000億ドル(11兆円超)規模のファンドを3月に立ち上げる予定。米国のIT(情報技術)やDNA解析といった医療分野の有望ベンチャーに投資する計画だ。
サウジアラビア政府系の公共投資ファンド(PIF)が450億ドル(5兆円強)出資し、ソフトバンクは5年間で250億ドルを出資する。投資先の選定など運用面でもロンドンに拠点を置くソフトバンクのチームが責任を持つことになるとしている。
今後、ソフトバンクは500億円内外の投資は、新ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を通じて行うほか、すでに出資することで合意した米衛星通信ワンウェブの持ち株も新ファンドに移す。
3月8日付英フィナンシャル・タイムズ電子版は「ソフトバンクグループが英アーム株式の一部を新しいファンドに移す」と報じた。英国の半導体設計会社アームは昨年、ソフトバンクが3兆3000億円で買収し完全子会社にした。さらに同紙は「保有株のうち25%(約9100億円分)をソフトバンク・ビジョン・ファンドに移す」としている。
ソフトバンクは、出資している企業の株式を新ファンドに移すことによって、本体の金利負担(有利子負債)を減らすことができ、リスクの分散にもなる。
しかし、これはソフトバンク本体と新ファンドとの利益相反になる恐れがある。アーム株が生み出す利益の一部が、ソフトバンク外に流出することになるからだ。ソフトバンクの株主の期待を裏切ることにもなる。有望な投資先が見つかった時、ソフトバンクが投資するのか、新ファンドが投資するのかで、対立することも起こり得る。