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垣田達哉「もうダマされない」

国の「トリキの錬金術」防止で“狙い目”は食事券になる…家族や仲間で10万円分獲得も

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表
国の「トリキの錬金術」防止で狙い目は食事券になる…家族や仲間で10万円分獲得もの画像1
鳥貴族の店舗(「Wikipedia」より)

 農林水産省は「Go Toイートキャンペーン」の食事券事業とオンライン飲食予約事業(以下、オンライン予約)の給付金配分を、7日、人知れず変更していた。今までは、食事券、オンライン予約双方に767億円配分していたが、それが食事券は868億円と101億円増額の一方、オンライン予約は616億円と151億円減額された。その理由は「オンライン予約より食事券の利用が多くなると見込んだ」からである。

 そこに降ってわいたのが、「鳥貴族マラソン」とか「トリキの錬金術」と呼ばれる利用方法である。鳥貴族をオンライン予約(席だけ予約)し、訪問し1品だけ注文して会計を済ませ1000ポイント(1000円)を獲得するという。支払いは1品298円(税抜価格)だが、ポイントが1000円付くので、税込327円の支払いで673円儲かるというものだ。

 一方、飲食店側は予約が入ると夕食で1人当たり200円の送客手数料を支払わなければならないサイトもある。鳥貴族の場合の例だと、実質298円-200円=98円の売上にしかならない。

 こうした行為は「オンライン予約のルール違反ではないが、客のモラルが疑われる」「飲食店が可哀想だ」という意見が多かったので、国は「ランチ500円以上、夕食1000円以上」という下限を定めることになった。

 前回の記事で筆者は次のように述べた。

「こうした現状で、なんとかポイントを獲得しようとすると、大勢の仲間で利用できそうな飲食店をできるだけ多く予約するしかない。10人で10カ所の飲食店を1カ月のうち20日間申し込む。時間を変える手もある。そのうち、10回の予約が取れたとする。ポイント付与は、1回の予約で最大10人である。10人で予約し利用すると、合計1万円が予約者に付与される。10人それぞれが10カ所予約し利用すれば、仲間10人で10万円のポイントが獲得できる。毎週2~3回は飲み会をするような人たちには、こんなことも可能かもしれない」

 鳥貴族マラソンでは、これを客が1人でやっていたのだ。さすがに、このコロナ禍で10人での飲み会を頻繁に行う人たちは、ほとんどいないようだ。それだけ予約サイトを利用する人が少ないので、ポイント付与も思うように伸びていないのだろう。

 一方、食事券は第1次募集の33府県で、予定していた給付金の70%以上が給付されてしまった。第2次募集で委託された東京や神奈川など14都道県は、日本の人口のおよそ半分を占める。農水省は、オンライン予約の利用率が低いので、これ幸いと配分割合を変えたのだ。

オンライン予約はますます使いづらく

 給付金の総額は、そのまま参加飲食店全体の売上金額になる。ポイントハンターがいくらポイントをためようが、農水省の言うように、いずれはどこかの飲食店で使われる。そのためには、消費者にどんどんポイントをためてもらい、早く使ってもらうほうが全体としては効果がある。早く給付金がなくなれば、追加の給付も要求できただろう。しかし、ポイントハンターが少なくなれば、ポイントの消費は遅くなる。しかし、農水省はオンライン予約の利用率が低いという理由で、給付金を減らしてしまった。

 しかも、1000円以上支払わないと1000ポイントが付与されなくなった。そのため、ポイントが「1000ポイント×人数分」以上たまることがなくなってしまったのだ。それは、多くのサイトでは会計時に付与されたポイントが優先的に使用されるからだ。現金で支払って、ポイントだけをためることもできない。サイト側の従来からあるポイントがたまっていても、Go Toイートのポイントから優先的に清算される。

 10人で予約した場合、予約者に1万ポイント付与されるが、次回に同じ予約者が10人で行けば1万ポイントが清算される(サイトによって、どんな仕組みになっているか公開していないところもあるので、利用する上では直接サイト側に確認したほうが良い)。

 いずれにしても、原則、付与された1000ポイントは、次回の会計時には優先的に使用されると考えるべきだ。ポイントは、一度に多く付与されるか、たくさんためて一度に使用することができるほうが、消費者にとってはありがたい。ところが、飲食店を利用されるたびにポイントが使われるのでは、ポイントをためる楽しみはない。

 しかも、鳥貴族のように居酒屋で「席だけの予約」ができなくなると、消費者はますますオンライン予約を使いづらくなるだろう。今回のポイントハンターをめぐる対応は、オンライン予約に期待していた飲食店にとって、本当に良かったのか疑問である。

 オンライン予約は「スタートした今月1日と2日の予約数は計115万枚に上り、ポイント付与額は10億円を超えるという」(10月8日付読売新聞オンライン配信)状況だ。農水省は、利用率が低いとして配分を151億円も減らしたが、2日で10億円ということは、同じペースでいけば、新しい配分額616億円は62日(約2カ月)で底をつくので、オンライン予約キャンペーンは終了する。

 前回、筆者は次のように指摘した。

「少なく見積もって月間述べ7670万人が、Go To イートのオンライン飲食予約を利用すれば、キャンペーンは終了するのだ。おそらくオンライン飲食予約を利用する飲食店は、人数予約が欠かせない宴会や飲み会に使われる居酒屋などが多いだろう。もしも、すべての飲食の予約が10人分だと仮定すれば、予約者である767万人が予約して飲食した時点で終了する。おそらく同一サイト内での同一人物の重複予約は認められないだろうが、仲間が10人いれば、それぞれが予約を入れれば重複することはない」

 すぐに終了する可能性もあるが、それが難しい理由も前回述べているので参考にしてほしい。

 結果論だが、オンライン予約に期待する飲食店は、早く終了させて、給付金の上積みを狙ったほうが得策だった。ポイントハンターは、いくらポイントをためようが、来年3月末までに、必ずどこかの飲食店で使用しなければならない。ポイントをたくさんためたポイントハンターに利用されない飲食店は、魅力がないのだろう。給付金が767億円から151億円も減らされたということは、全国の飲食店の売上が151億円減ったことになる。

 給付金は、これからも配分が変わる可能性はあるが、食事券の場合、第二次募集に応募した14都道県は、人口第1位、2位、8位、9位の東京都、神奈川県、北海道、福岡県に加え、青森県、宮城県、山形県、茨城県、群馬県、和歌山県、鳥取県、島根県、長崎県、沖縄県と、この14都道県で日本の人口の約半数を占める。もうすでに、当初の給付金の約70%は割り当てが済んでいる。

 それで農水省は、14都道県の飲食店や消費者から不平・不満が出る前に、オンライン予約を減らし食事券を増額したのだ。オンライン予約は、抜け道を利用されたこともあり、農水省が集中砲火を浴び、メンツをつぶされた格好だ。農水省は、一刻も早く終了させたいだろう。

 最低金額を設定しても、理論上は「2回目の予約からは、毎日1000円の夕食が無料で食べられる」(予約と付与の関係があるのでほぼ無理だが、数日間単位であれば可能なサイトもある)し、「1人ハンターより、10人仲間ハンターのほうがポイントは早く多く獲得できる」というのが、今回のオンライン予約の仕組みだ。ポイント予約に慣れている消費者には、うれしいキャンペーンだが、ポイント予約の仕組みを理解できていない消費者には、圧倒的に不利なキャンペーンだ。さらに、飲食店数が少ない地方ほど、ポイントを獲得する機会も使う機会も少ないので、都会に比べ圧倒的に不利なキャンペーンなのだ。

 オンライン予約が低調であれば、当然食事券への配分がもっと大きくなる可能性がある。オンライン予約に参加している飲食店も、食事券に参加し、食事券を利用する消費者を取り込んだほうが得策だ。食事券は、一度に最大25000円(実質)購入することができる。しかも購入制限はない。食事券を5万円、10万円購入した家族や個人をターゲットにしたほうが、1回当たりの消費金額はオンライン予約より数倍、数十倍多くなるだろう。

 消費者も飲食店も、狙うは「食事券」だ。

(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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