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黒田尚子「『足るを知る』のマネー学」

スマホ決済で「ポイント投資」利用者急増…元手ゼロ、リスク低なので高リターン狙い可

文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー
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「GettyImages」より

 スマホ決済やクレジットカードなどを利用することで得られるポイント。「ポイ活」なる言葉が使われるほど、キャッシュレス決済の普及で、ポイントは俄然存在感を増してきた。

 今年9月1日から、すでにマイナポイントの還元もスタート。2万円までのキャッシュレスでの消費で、最大25%分のポイント還元(最大5,000円分)が、各事業者のポイントでもらえる仕組みである。

 筆者もすでに受け取った。1万円のチャージで2,500円が2回に分けて加算されたが、マイナポイントとも何も表示されないので、「え?これ何のポイント?」と一瞬わからず。あとからマイナポイントだと気づく有様。

 それくらいキャッシュレス決済を利用する機会が増え、予想以上にさまざまなポイントが貯まっている。ポイントでプチ節約ができるほど、家計に占める割合も結構な金額という人も少なくないだろう。

 さらに、最近では「ポイント投資」ができる商品やサービスが急増して参入企業の競争が激化。元手ゼロでも投資ができるこのサービスは、日本人の投資の苦手意識を克服できる起爆剤となるのかどうか?

 今回は、「ポイント投資」の特徴やメリット・デメリット、実際に行う場合の留意点などを考えてみよう。

ポイント投資とは何か?

 ポイントを活用した投資は、大別すると「ポイント投資型」と「ポイント運用型」の2つがある。主な特徴は以下の通り。

<ポイント投資型>

・1ポイント=1円など、ポイントをいったん現金化し、その資金で株式や投資信託やETFなどに投資できる。

・実際に商品を購入するので、証券会社の口座の開設が必要。

・配当や株主優待なども受け取れる。

・ポイント投資型を提供しているのは「LINE証券」「楽天証券」「SBIネオモバイル証券」「SMBC日興証券」など(図表参照)。

<ポイント運用型>

・ポイントを現金化せず、そのまま運用会社に預けて運用してもらう。

・あらかじめ用意されたコース(「株式コース」or「投資信託コース」(クレディセゾン/永久不滅ポイント)、「おまかせコース」or 「テーマで運用」(NTTドコモ/dポイント)などの選択肢が用意されていて、そのコースの値動きに応じてポイントが増減する。

・証券会社の口座の開設は不要で、手数料などはかからない。

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ポイント運用型に向いている人は?

 ポイント投資型とポイント運用型の両者を比較してみると、手軽さの点では、断然、ポイント運用型に軍配が上がる。なにせ、疑似的に運用するだけなので、証券会社に口座を開設する必要はないし、手数料もかからない。いわば、ポイントが増減するのをゲーム感覚で楽しめば良いだけだ。

 ポイントを現金化し、現金を殖やしていくポイント投資型と異なり、ポイント運用型は、ポイントが殖えていく(もちろん逆も)。運用は100ポイント単位がほとんどで、1ポイントから引き出して使える。

 両者に共通しているのは、損をしても、ポイントの範囲内だけなので懐は痛まないという点。ただ、ポイント運用型のほうがより一層、リスクを取りたくないが投資を体験してみたいという人向きだろう。

 いずれのサービスも利用者は増加しており、2016年12月からクレディセゾンがサービスを開始した「永久不滅ポイントポイント運用サービス」は2020年6月の時点で利用者51万人。2018年10月から楽天がサービスを開始した楽天スーパーポイントの「ポイント運用」は、今年2月上旬にはユーザー数が100万人を超えた。

 ポイント運用型の利用者の特徴は、一般口座に比べて、20代~40代といった投資未経験の若年層と女性が多いこと。これまで投資を経験していなかった層への訴求力があるサービスといえる。

 また、投資ビギナーはリスクを抑えたがる傾向が強いが、ポイントで運用するとなれば、積極的な投資スタンスを取る人のほうが多い。楽天スーパーポイントの「ポイント運用」は、株式重視型ファンドに連動する「アクティブコース」と債券重視型ファンドに連動する「バランスコース」の2コースが用意されているが、7割以上が値動きの激しい前者を選択しているという。どうせやるなら、よりリターンが大きくなる可能性のほうに、というわけだ。

ポイント投資型に向いている人は?

 ポイント運用型で投資の妙味を知ると、もっといろいろと投資の可能性を広げたいと感じる人も出てくるはず。

 QUICK資産運用研究所が全国の約5万人を対象に行った意識調査(2019年11月)によると、ポイント運用をしたことがある人は12.4%(「ある」9.3%+「過去にしていたが今はしていない」3.1%)で、このうち、実際に投資を「始めた」人が30.7%という結果になった。さらに、「始めたいと思っているが今はまだしていない」人も20.4%いて、これらを加えると、半数以上の人がポイント運用を経験したことで、実際の投資をスタートもしくはスタートしようとしている。

 そこで、ポイント運用型で投資への疑似体験を受けた後、ポイント投資型で投資の幅を広げるのも一手だろう。引き続き、損をしてもポイント分のみだから、リスクは限定的。対象となる金融商品はサービスによって異なるが、所定の株式や投資信託、ETF、REIT、FXなどを購入できる。

 少額投資のため、単元未満株であっても、配当は株数に応じて受け取れ、単元株に達すれば、株主優待ももらえるようになる。

さらに「クレカ投資」で投資経験を積む

 投資できるといっても、ポイント投資の場合、あくまでも手持ちのポイントの範囲内での運用となる。ちなみに、筆者もクレジットカードのポイントを運用しており、自動的に全世界株式インデックスのETFに積立投資されている。コロナ禍にある今年4月から9月の半年間の積立金は合計約2万6000円。収益はプラス約900円という結果だ。元手がゼロと思えば、なかなかの金額のような気もするが、長期の資産形成というにはやや(というかかなり)心許ない。

 そこで、投資ビギナーの投資へのハードルが下がったところで、次のステップとして行いたいのが毎月の積立である。クレジットカードを利用した「クレカ投資」なら、積立でもポイントが貯まる。

 特徴は、月数千円と少額(商品によって異なる。楽天カードとタカシマヤカードは月100円)から始められることや手続きが簡単なこと。証券会社に口座を開設する必要はあるが、登録済のクレジットカードの顧客情報が利用されるので、通常の口座開設よりも格段に手間がかからない。

 さらに、投資可能な商品を絞って選びやすくしている会社もある。2018年8月にサービスを開始した「エポスカード」(tsumiki証券)の場合、購入できるのは投資信託4本のみ。また、2019年11月にクレディセゾンがスマートプラスと提携し、「セゾンカード」や「UCカード」で投資できる「セゾンポケット」を開始。こちらは、投資信託2本、国内株式130銘柄、国内ETF3銘柄となっている。

 投資家のなかには、商品ラインナップが多いほうが良いという人も少なくないが、やはりある程度経験を積んでいればこそ。筆者が投資ビギナーから相談を受けていると、「何を選んで良いかわからない」というお悩みはよく聞く。あらかじめ、商品を限定することで投資へのハードルをさらに下げているわけだ。

ポイントも集めて貯めて、殖やす時代に

 これまでポイントについては、「預金のように金利がつくわけではないから、とにかく付与されたら、期限を迎える前に使って!」とアドバイスしてきた。

 それが今やポイントも殖やせる時代になったのである。ファイナンシャルプランナーである筆者としては、こんなおトクなサービスを使わない手はないと思う。

 しかも、ポイント投資は投資や経済を学ぶ上で効果的な教材である。「習うより慣れよ」の言葉通り、まずやってみること。そして続けていくことが大切だ。

 おそらくポイント投資で100円から投資を始める人の多くは、投資のための余剰資金が100円だけではないはずだ。ネットエイジアが20歳~49歳の男女を対象に行ったポイント活用に関する調査(2020年2月)によると、利用しているポイントサービスについて、1位「Tポイント」(65.7%)、2位「楽天スーパーポイント」(60.2%)、3位「Pontaポイント」(46.6%)、4位「dポイント」(34.8%)の順になっている(図表参照)。

 これらは、すべてなんらかのポイント投資が可能となっている。おそらく、すべて持っているという人も少なくないだろう。ちなみに筆者もすべて持っていて、レジでうっかり、アプリを提示し忘れたときは悔しい気持ちにさせられるのがイヤで、日々目を光らせている。

 いずれにせよ、今後もキャッシュレス決済は確実に広がっていく。個人情報保護やセキュリティの問題などはあるが、みなさんには賢い消費者として、ポイントをいかに集約させ、貯めていくか。そして殖やしていくかを考えてみていただきたい。

(文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー)

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黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

黒田尚子/ファイナンシャル・プランナー

 1969年富山県富山市生まれ。立命館大学法学部卒業後、1992年、株式会社日本総合研究所に入社。在職中に、FP資格を取得し、1997年同社退社。翌年、独立系FPとして転身を図る。2009年末に乳がん告知を受け、自らの体験から、がんなど病気に対する経済的備えの重要性を訴える活動を行うほか、老後・介護・消費者問題にも注力。聖路加国際病院のがん経験者向けプロジェクト「おさいふリング」のファシリテーター、NPO法人キャンサーネットジャパン・アドバイザリーボード(外部評価委員会)メンバー、NPO法人がんと暮らしを考える会理事なども務める。著書に「がんとお金の本」、「がんとわたしノート」(Bkc)、「がんとお金の真実(リアル)」(セールス手帖社)、「50代からのお金のはなし」(プレジデント社)、「入院・介護「はじめて」ガイド」(主婦の友社)(共同監修)など。近著は「親の介護とお金が心配です」(主婦の友社)(監修)(6月21日発売)
https://www.naoko-kuroda.com/

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