B氏 最近、営業本部の部長クラスで相当有能だった人が辞めました。すでに辞めた人たちは「あの人が辞めたのなら、自分も辞めて正解だったな」と思っていますよ。久美子さんは優秀で辞めそうな社員を店長や次長に引き上げて、匠大塚に転職しないように説得することもありました。「創業メンバーでもないのに、今さらあの会社に行っても出世できないし、どうなるのかわからない会社に行って、どうするの?」って。
リユース事業の実態
――リユース事業を始めたことについては、どう評価していますか。
A氏 久美子さんは「自動車の中古市場は流行っているから家具も絶対に上手くいく」と言っていました。最初は納得する社員もいましたが、フタを開けてみたら家具の中古品はボロボロになっていて、廃棄処分品のようなものです。それに手を加えて売ったところで、まともな価格は付けられず、人件費すら賄えません。
B氏 思い違いは来店客数に対する認識にも表れていますね。昨年2月に新宿ショールームをリニューアルして、来店客数は増えたのですが、初日の売り上げは前年の半分以下でした。久美子社長は「入りやすい店にして、お客様が増えて大成功」と思ったそうですが、客層が変わってしまいました。
それまではソファセットが20~40万円で売れていましたが、リニューアル後は8万円のセットを買うようなお客様が増えたのです。8万円の商品を買おうとしているお客様に、20万円への単価アップはできません。それで8万円の会計を済ませると、「俺って、一体何してるの?」と。そんな思いが重なって辞めた社員もいます。
C氏 新しい事業に手を出すよりも、社員数を半分に減らして店舗も減らせば、大塚家具はメチャクチャ利益が出ると思いますよ。それなのに久美子さんは地方に店舗を出すと言っているし、新卒も採用するし。今の客単価では人件費を吸収できないですよ。
A氏 マンツーマンの接客を止めたことで、長年の常連客がどんどん離れていっています。大塚家具は自滅に向かっているようにも見えますね。1脚40万円のダイニングチェアの修理を依頼してきたお客様に対して「すみません。できません」と断わった例もあります。リユースの工房の職人さんから「こんなにゴミの山を持ち込まれているのに、そんな修理できねえよ」と断わられちゃったらしいのです。
B氏 従来のお客様が修理を頼んできた時に「リユースでもっと良い品がありますよ」と言っているから、お客さんがどんどん離れてしまうんですよ。
――久美子社長も今さら、勝久会長に支援を求めるわけにはいかないでしょう。
C氏 実は私は、久美子さんは頭の良い人なので、業績が悪化するなかでもウルトラCを仕掛けて業績を回復させるんじゃないかと、密かにそう期待していました。しかし、結局、なんら有効な策が出ないまま、どんどん悪化していって。それで私は見切りをつけて辞めました。
B氏 勝久元会長は社員を家族のように扱ってくれて、叱られていても人を惹きつける魅力がありました。私もこの人のためにがんばろうという気持ちになりました。でも、久美子さんのためにがんばろうと思う社員はいないでしょう。
C氏 勝久元会長は、もはや大塚家具の業績回復は難しいと思う一方で、久美子さんのことを心配しているそうです。久美子さんも、ここまで業績が悪化し続けると、本心では勝久元会長に泣きつきたいんじゃないでしょうか。できないでしょうけど。
(構成=編集部)