東芝も「新生東芝アクションプラン」では相談役や顧問制度の見直しを打ち出しているが、東芝の内規には相談役を退任したあとには特別顧問の役職が用意され、西室泰三氏、岡村正氏、佐藤文夫氏など歴代5人の社長が顧問に就任している。
東芝では「チャレンジ」と称して高い収益目標を設定し、それが粉飾決算の原因になったが、シャープでも「チャレンジ精神」が鼓舞されたという。
「チャレンジ精神を向上させる、という具体策はみたことがありません。掛け声をかけていれば、社員の姿勢が変化して、ボトムアップでどんどん行動が改善されていくと思われているのでしょうか」(同)
シャープは13年度第1四半期の決算で、前期の941億円の営業赤字から30億円の黒字に転換したものの、最終利益ベースでは179億円の赤字、自己資本比率は6%と厳しい経営が続いた。
そうしたなかでサムスン電子などとの資本提携など、他社との資本提携について記者に聞かれた高橋社長は、「事業の提携がないことには、コラボレーションはうまくいかない」と答えていたという。
「シャープの現在(執筆当時)の自己資本比率はわずか6%であり、負債が資産を超える債務超過が現実的なリスクとなっています、資本の強化は喫緊の課題であり、本来なら出資は少しでも多く募りたいところです。しかし、事業提携とセットにするという方針のため、まず、出資先が事業会社に限定され、投資会社から出資を受けるということが選択枝になりません。(略)出資先を事業会社に絞り、かつ出資額を100億円程度に抑えるというのは、穿って見れば、経営陣の保身ではないかという見方もできます。どこかわけのわからない奴にシャープを乗っ取られるわけにはいかない、などと経営陣が考えて、自分たちのコントロールのできない会社に株が売られていくのを避けたいのかもしれません」(同)
自立再建か、政府主導か、それとも……
シャープは13年度に一時は最終利益を115億円の黒字に好転させるが、14年度第3四半期には71億円の赤字に転落、シャープの本社ビルや隣接する田辺ビルを売却、再度の希望退職を募って3234人が退職した。
16年5月に発表された15年度決算では2559億円の最終赤字を計上し、債務超過に転落、東証一部から東証二部に指定替えさせられたが、水面下では16年2月には鴻海やジャパンディスプレイの筆頭株主で官民ファンドの産業革新機構と経営再建を協議していた。
出資先の選定は翌月までもつれ込み、鴻海の支援再生を仰ぐことになった。東芝も今年の決算で債務超過に陥り、東証一部から東証二部市場に指定替えされることはほぼ確実だ。虎の子の半導体事業を分社化し資金調達するが、当初はマイノリティーの出資に限定していた。しかし、今となってはそうもいかない。
果たしてシャープと同じ道を歩んできた東芝は今後どうなるのか。自力で再建するのか、鴻海やサムスンなど外資の傘下に入るのか。
「東芝の原発事業などは国策と深くかかわっているために倒産させることはない。外国企業に売り渡すわけにもいかない。政府主導で支援するのでは」
企業再生に詳しい弁護士はこう語る。4月11日、2度の延期を繰り返してきた16年度第3四半期決算が発表され、最終損益が5325億円の赤字に陥ったことが明らかとなった。東芝は大きな山場を迎えたといえよう。
(文=松崎隆司/経済ジャーナリスト)
『シャープの中からの風景 シャープ社員がブログに綴った3年間』 あのシャープの経営危機の中で大きな注目を集め、鴻海の出資後に幕を閉じた、 ブログ『シャープの中からの風景』("ライブドアブログ OF THE YEAR 2016"話題賞)の書籍化! 2013年1月、空席が目立つようになった職場の風景にかき立てられるように、 ひとりの社員がブログをひっそりと書き始めた――。 シャープという巨船が沈みかけたとき、社員はいったい何を思ったのか? 大きく揺れるシャープの内側から見たこと、考えたことを当事者がリアルに綴った、 すべての会社員にとって他人事ではない話題作。