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シャープ、中から綴られた「崩壊1311日」の全貌…東芝と共通する大企業の異常な内幕

文=松崎隆司/経済ジャーナリスト
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社内体制が変わっても「大改革できない」

 シャープは1912年に創業し、その後日本初のターンテーブル式電子レンジやオールトランジスタダイオードの電卓などを開発。電卓の開発から液晶の技術を高め、液晶テレビ「AQUOS」などを開発してテレビメーカーで世界トップシェアを獲得、「液晶のシャープ」と呼ばれるようになる。

 しかし、リーマンショック以降業績が悪化、2011年度には3760億円の巨額赤字に転落、12年3月14日には片山幹雄社長が代表権のない会長に、奥田隆司常務執行役員が社長に就任することが発表された。その年の12月には希望退職で2960人が会社を去り、社内にも危機感が募るようになったという。

 そうしたなかで13年1月から社員(現在は退社して元社員)のひとりが匿名でブログを立ち上げた。それが今年3月、書籍『シャープの中からの風景』(宝島社)として出版された。本書では、東芝に通じる大企業の問題点を垣間見ることができる。

 著者の元シャープ社員A氏がシャープの倒産にリアリティーを感じたのは、12年夏頃だったという。決算発表で社内に危機感が広がるなかで、8月には新聞で白物家電事業の売却などが報じられた。3月に発表された鴻海との資本提携は郭台銘(テリー・ゴウ)会長が来日したにもかかわらず、提携交渉が不調に終わり、「いよいよ来るところまで来たか」という思いがしたという。11月から希望退職を募集、年末までに2960人が会社を去った。

「多くの仲間たちが一斉に会社を去り、急に空席が目立つようになった職場の風景に寂しさを覚えた」(『シャープの中からの風景』より)

 13年6月には、奥田氏が就任わずか1年で社長を退任、代わって高橋興三副社長が社長に就任した。そんな社内体制が変わってもA氏は「大きな好転は見込めない」と綴っている。

「新社長になる高橋氏に残念ながら期待できない大きな理由は、副社長に就任して1年以上経ち、その間片山(幹雄)会長と組んで自由に動いていてきたにもかかわらず、大きな改革がほとんどできていないことです」(同)

東芝の「チャレンジ」とシャープの「チャレンジ精神」

 それだけではない。液晶事業に過剰な投資をし、シャープの経営危機を招いた元凶である町田勝彦元社長は無報酬の特別顧問として会社に残った。

「旧経営陣の責任の取り方を明確にせず、特別顧問などの処遇をすることは、シャープにおいて『責任』という概念を曖昧にします」(同)

『シャープの中からの風景 シャープ社員がブログに綴った3年間』 あのシャープの経営危機の中で大きな注目を集め、鴻海の出資後に幕を閉じた、 ブログ『シャープの中からの風景』("ライブドアブログ OF THE YEAR 2016"話題賞)の書籍化! 2013年1月、空席が目立つようになった職場の風景にかき立てられるように、 ひとりの社員がブログをひっそりと書き始めた――。 シャープという巨船が沈みかけたとき、社員はいったい何を思ったのか? 大きく揺れるシャープの内側から見たこと、考えたことを当事者がリアルに綴った、 すべての会社員にとって他人事ではない話題作。 amazon_associate_logo.jpg

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