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上場企業のリストラ加速で1万人突破…30代もターゲット、最多はレオパレス21の1000人

構成=長井雄一朗/ライター
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レオパレス21本社(「Wikipedia」より)

 東京商工リサーチの調査によると、2020年の上場企業の早期・希望退職者募集が1万2000人(10月26日時点)となり、1万人を突破した。年間で募集人数が1万人を超えるのは19年に続いて2年連続だが、20年は19年より1カ月ほど早く、ハイペースで推移している。募集企業数は19年の2倍の70社に達し、10年の85社に迫る勢いだ。

 この現状について「募集企業は53.6%が赤字。今後、製造業の募集が本格化すれば、募集人数が大きく増える可能性もある」と語る、東京商工リサーチ情報本部情報部の二木章吉氏に話を聞いた。

最多はレオパレス21の1000人

――現状の傾向について、どう見ていますか。

二木章吉氏(以下、二木) 昨年は業績が好調にもかかわらず将来的なリスクに備えて人員削減を断行する「黒字リストラ」が目立ちましたが、今年は「不況型リストラ」が増えている印象です。金融機関の融資により倒産件数こそ抑制されていますが、今後の経営に危機感を抱く企業が多く、景況感が反映されています。また、募集が判明した70社のうち、新型コロナの影響を要因(間接的含む)に挙げたのは25社で、全体の3分の1まで増加しました。

 これまで、早期・希望退職の募集といえば40~50代がメインであり、昨年は74.2%の企業が年齢・社歴を設定していました。一方、今年は46.3%で、30代はおろか、新入社員以外すべてが対象にされるケースもあります。事業から撤退し、同時に該当部署の人員をすべてリストラするという事態も発生しています。

 また、首都圏に本社機能のある企業でも、地方に製造拠点がある場合では、その地方で大幅なリストラをすることもあります。そうなると、雇用の場が失われることにより、地域経済に悪い影響を及ぼします。今年の年初までは従業員の年齢構成の是正や雇用の流動性という一応の建前がありましたが、もはやそうも言っていられない状況ということでしょう。

――各企業の動向を教えてください。

二木 募集人数は、最多がレオパレス21の1000人。次いで、コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングスの900人、ファミリーマート800人(応募1025人)、複数の子会社で実施するシチズン時計が750人、東芝770人、ノーリツ600人(同789人)の順になっています。

 製造業では、大手自動車部品関連業ではミツバが500人、河西工業300人、市光工業100人、タツミは30人となり、自動車業界の厳しさがうかがえます。

 昨年は1000人以上の大型募集は4社でしたが、今年は今のところ1社にとどまっています。また、募集人数300人以下が50社(構成比71.4%)で、7割以上を占めています。このうち100人以下の募集は32社(同45.7%)で、全体の約半数近くにのぼります。これは、コロナ禍による急激な市場環境の悪化や業績低迷を受け、限定された部門での募集が増えたことも背景にあります。

――かねてから苦境に立たされていたアパレル業界は、コロナ禍でさらに苦しくなりましたね。

二木 大手のワールドが200人を募集し、5ブランド廃止と358店舗の閉店を決めるなど、構造改革を行っています。TSIホールディングスでも今期中に210店舗の閉店や子会社の解散、撤退ブランドを発表し、300人の人員削減策を発表しました。繊維商社の三共生興は、子会社を含めて社員の約1割に相当する30人を募集しています。

 アパレル業界では、コロナ禍で、低価格帯の商品が主力で郊外に店舗が多い企業の業績が堅調です。代表的なのはユニクロ、ワークマン、しまむらなど、自宅周辺で過ごす「ワンマイルウェア」を安価に提供している企業です。一方、通勤着などを扱う中価格帯以上のブランドを持つ企業は、業績の戻りが鈍い状態が続いています。アパレル業界は昨年の暖冬や消費増税の悪影響がいまだに続いており、そこにテレワークの普及やインバウンド需要の消失というマイナス要因が直撃しました。

企業の不況型リストラは来年が“本番”か

――逆に、早期・希望退職を募集しない姿勢を打ち出した企業はありますか。

二木 ある観光会社は、構造改革を行うものの、リストラはしないと発表しました。給料は下がりますが、雇用は守るという姿勢を打ち出したわけです。また、たとえばレジャー関連業界などは、新型コロナが収束して観光需要が一気に高まった場合、人員がいなければ回りません。そのため、外食や小売なども含めて、労働集約型の業界はコストカットと雇用維持のバランスに苦慮しているのではないでしょうか。

――今後の見通しについて教えてください。

二木 現在、当面の資金調達は確保している上場企業が多いので、来年に入って新型コロナが収束すれば、募集も抑制される可能性があります。逆に、感染拡大が長引き、さらに東京五輪が無観客を含め予定通り開催されないとなれば、多くの需要が失われることになるため、募集企業の増加を後押ししてしまう可能性もあります。

 08年のリーマン・ショックに伴う世界同時不況では、早期・希望退職の募集のピークは09年に訪れました。また、製造業は地方の工場などですぐに撤退を発表することは難しいため、募集開示が今年の秋から来年にずれ込む可能性があります。そして、製造業は募集人数が多くなることが予想されるため、全体の募集人数が一気に増えることも考えられます。

 雇用調整助成金でしのいできた企業も、給付が終われば、再び経営が行き詰まります。今後、特に飲食業や各種サービスなどの労働集約型産業では、さらなる募集増も懸念されます。いずれにしても、需給の回復が不透明であるため、先行きに懸念を抱く業界を中心に、早期・希望退職の募集は来年にかけても高い水準を維持するのではないでしょうか。

(構成=長井雄一朗/ライター)

長井雄一朗/ライター

長井雄一朗/ライター

建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス関係で執筆中。

Twitter:@asianotabito

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