東日本大震災の被害を巡る“失言”で、26日、復興相を辞任した今村雅弘衆議員議員。連日、各メディアがこのニュースをかなりの時間・紙幅をもって伝えているが、そこでまたもや注目を集めてしまっているのが、今村議員が締めていた『新世紀エヴァンゲリオン』(以下、『エヴァ』)柄のネクタイだ。
遠くから見ても、アニメのキャラクターがプリントされているなと分かってしまう例のネクタイ。まず今月4日の定例会見で、今村議員が東京電力福島第1原発事故に伴う自主避難者の帰還に関して、執拗に質問した記者に対して「撤回しなさい」などと激高。その発言を釈明した際に着用していたことで、ネット上の『エヴァ』、アニメファンの間で話題に。
その後、あのネクタイは過去に『エヴァ』の版権を持っていたガイナックスが発売したもので、今村議員が「福島ガイナックス社」を訪れた際に、プレゼントされたものだと判明。「福島の企業を応援するため、元気にするため」にと、マメに着用していたそうだが、変な形で注目を浴びてしまうという、皮肉な結果となってしまったわけだ。
4日の定例会見~釈明後の6日には株式会社カラーは公式Twitter(@khara_inc)で、「復興相がエヴァ柄のネクタイを着用されていた件について、作品が福島復興のお役に立つのであれば嬉しい事なのですが、福島の企業と『エヴァンゲリオン』は無関係ですし、弊社としてはあずかり知らぬ事で当惑しております。本件に関する弊社への取材・お問い合わせはご遠慮下さいますようお願い致します」と告知。
さらに今回の“失言”後には『エヴァ』シリーズのキャラクターデザインを務め、コミック版も描いた貞本義行氏もTwitter(aY_Sadamoto)で「俺の絵のついたネクタイしてくれなくていいですよ!」「しかもその漫画は復興させんといけん会社とは、もう何の関係も無くなっちょるしの〜」とつぶやいている。
カラーと貞本氏が口をそろえているように、ガイナックスと、『エヴァ』シリーズや『シン・ゴジラ』の監督として知られる庵野秀明氏が代表取締役を務め、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズを制作しているカラーは別会社。昨年12月には、カラーがガイナックスに対して借入金の支払いを求め、訴訟も起こしている。
そして『エヴァ』の版権も、以前は(C)表記が「カラー・GAINAX」と2社表記になっていたが、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』の公式サイトではいつの間にか「(C)カラー/Project Eva. (C)カラー/EVA製作委員会 (C)カラー」となっており、ガイナックスの文字が消えている(※商品化の企画・開発・販売、著作権の管理などは株式会社グラウンドワークスが行っている)。
しかもガイナックスは福島以外にも、米子、京都、新潟、GAINAX WEST、と“ガイナックス”の名を冠する企業を立ち上げてきたが、それらは資本が連携していないことを、訴訟が報道された際に、公式サイトで発表している(福島ガイナックスも設立当初はガイナックスの関連会社であったが、15年12月に全株式を引き取り、現在は独立会社であると説明している)。
つまり、今村議員に『エヴァ』ネクタイをプレゼントした福島ガイナックスと『エヴァ』は距離が近いように見えて全然遠く、その上なぜそんなグッズを大臣にプレゼントしてしまったのか? という疑問も残る、やや複雑な関係となっており、何もしてないのに現在『エヴァ』の版権を持つカラーがひたすら迷惑しているという、カラーには大変気の毒な状況となっているのだ。
なお『エヴァ』ネクタイは、今村議員が着用していたキャラの顔がしっかりわかる「貞本義行コミックスタイプ」(税込8,424円)に加え、使徒サキエルとイスラフェルを図案化した「使徒タイプ」、「ネルフマーク柄」など複数のタイプが発売されているが、「貞本義行コミックスタイプ」は『エヴァ』グッズを取り扱うオフィシャルサイト「EVANGELLION SOTRE」では売り切れ状態となっている(4月28日現在)。釈明中の今村議員を見て「あのネクタイ、格好いい!」と思った方は注意しよう。
(文=編集部)
『Panty&Stocking with Garterbelt コミックス柄ネクタイ』「 Panty&Stocking with Garterbelt」本編よりセレクトした場面写を、ポップなアメコミテイストにデザインした、「コミックタイプ」のネクタイです。