松本新大臣の疑惑より気になる「売上2000万円」は安すぎ?有名なプライドの高さ
国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。
岸田内閣の閣僚の辞任ドミノが連日報道されていますね。11月20日の寺田稔前総務相の辞任をめぐっては、与野党内で批判が続き、決着までに1カ月半もかかったことで、決断できなかった岸田文雄首相の優柔不断ぶりも目立ってしまいましたね。
とはいえ、後任の松本剛明総務相の政治資金規正法違反疑惑は、神澤的には「粗さがし」にしか思えません。そもそも何が問題なのでしょう?「しんぶん赤旗」は「会場の収容人数を超えるパーティー券を販売した疑い」を指摘していますが、「超えてはならない」的な法律はないです。パーティー券を何枚売るかは、むしろ議員の度量や人気、器の大きさのバロメーターなのです。
なので、パーティー券販売担当の秘書は、もう必死でボスの魅力をアピールして券を売りまくります。秘書全員にノルマを課している事務所もあります。売れなかったら秘書が買い取らなくてはなりませんから、これまた必死で支援者に頼みまくります。企業によっては参加者数よりも多く買ってくれるところもありますが、もちろんこれも違法ではありません。
むしろ神澤は、松本大臣のパーティー券の売り上げが約2000万円しかないことに驚いています。「案外少ないんだな」って思っちゃいましたね。神澤がお手伝いするのは1000人単位のパーティーなので、2000万円は少ない方です。松本大臣は集金能力が意外に低いことが世間に知られてしまって、恥ずかしい思いをされているのではないでしょうか。政治家さんはだいたいみんなそうですが、松本大臣のプライドが高いことは永田町では有名なのです。
岸田首相の空白領収書は秘書のミス?
「もう岸田内閣も倒れるよ。いろいろ予定が変わるから大変だ」
11月22日午後、野党議員の事務所から聞こえてきたのは、岸田首相に対する「文春砲情報」でした。公選法違反の疑いです。記事には、昨秋の衆院選の選挙運動費用収支報告書に、宛名も但し書きも空白の領収書を94枚添付してあったそうで、「目的を記載した領収書を提出することを定めた公職選挙法に違反する疑いがある」とありました。
正直、「なんだそんなことか」です。いいことではないですが、すでに選挙管理委員会が受け付けているなら問題ないです。選挙収支には使途もきちんと示されているはずです。
まあ記事を読むと、かなり金額の大きい領収書の但し書きもなかったようなので、神澤のようなベテラン秘書からすると「秘書のあり得ない凡ミス」となります。日頃からあまり注意していなかったのでしょう。なんでこんな初歩的なこともできないのか疑問ですが、公選法違反まではないと思いますよ。
ていうか、松本大臣のパーティー券も岸田首相の領収書も、これが違法というなら多くの国会議員が逮捕か辞任でしょう。以前なら内調(内閣情報調査室)が似たようなことをしている野党議員の情報を出して混乱を収めていたと思いますが、そんな動きもありませんね。時代は変わったということでしょうか。
とはいえ、些細なことでも「国策捜査」に使われることもあります。2009年から2010年にかけての小沢一郎衆議院議員の政治資金規正法違反をめぐる疑惑がいい例です。
この件で、検察は当初は小沢議員が地元の業者から4億円の賄賂を受け取り、秘書用の寮を建設するための土地を購入したという見立てで捜査しましたが、「裏金」の存在を証明できず、当時の秘書たちの「収支報告書の記載ミス」として、当時の秘書ら3人を起訴して有罪にしたのです。
当時は小沢議員も所属していた民主党が政権についたタイミングでもあり、検察は自民党を応援したかったのでしょう。しかし、小沢議員の疑惑には当時の民主党の中にも軋轢が生まれ、身内であるはずの民主党議員までもが検察に協力し、小沢議員を失脚させようとしていました。まあ、今回はそんな気配はないようですけどね。
確かに、死刑をネタにして笑いを取ろうとする法務大臣とか、国民が呆れるような組閣だったことで批判が続くのは仕方ないと思いますが、なんでもかんでも問題にしないでほしいです。
余談ですが、今年8月の第2次岸田改造内閣発足時の記念撮影では、山際大志郎経済再生相、葉梨康弘法務相、寺田稔総務相(いずれも当時)の3人が並んで写っていると話題になっていました。よく気づきましたね。
編集者さんは「モーニング娘。のミリオンセラー『LOVEマシーン』のCDジャケットの写真の右上から順にジグザグにメンバーが卒業した話みたいですね」と言っていました。さすがに古いですね……。誰ですか、「次に辞任する大臣は?」とか言ってるのは(笑)
支持率最低でも自民党の重鎮が解散に反対?
さて、今後はどうなるのでしょうか。神澤は岸田首相のお疲れが気になります。
11月19~20日のANNの世論調査によりますと、岸田内閣の支持率は政権発足以来、最も低い30.5%でした。「危険水域」とされる30%割れが間近に迫り、さらに不支持率は3.8ポイント増えて44.7%でした。世論調査に一喜一憂してはいけないと、いつも申し上げていますが、これはダメージが大きい数字だと思います。お疲れも当たり前ですよね。
たとえば、11月21日の衆議院本会議で岸田首相が相次ぐ閣僚の辞任について説明したとき、寺田大臣(当時)の名前を「タケダ」と読み間違え、すぐに「テラダ」と読み直したことが報じられていました。打ち合わせナシだったのか、原稿をかなりゆっくり読んでいたのも気になりましたね。普通は事前に目を通すもので、初見ということはまずないのです。
APEC首脳会議からの東南アジア歴訪で時差ボケとかもあるのかもですが、午前中の記者会見でも「タケダ」と読んでいたそうで、与党内からも「もう政権はもたない」という声が出ているようです。
ちなみに、11月22日には超党派サウナ議連(サウナ推進議員連盟総会)の初会合があったのですが、会長に就任した武田良太衆議院議員が「テラダではなくタケダでございます」と挨拶して場内大爆笑になっていました。まあ確かに神澤も岸田首相が間違えるたびに「後任は武田議員にしたかったのかな」と思わなかったといえばウソになりますけどね。
政権の危機だったら、こんな冗談言える雰囲気ではないですよね。神澤もこのままいくと思いますよ。経済低迷、ウクライナ問題といい材料がない中でもありますし、岸田首相は「年明けの通常国会までの内閣改造はない」と明言されています。
一部では2014年の「ヤケクソ解散」のような事態も噂されていますが、これもないでしょう。当時の安倍晋三首相が小渕優子経産相、松島みどり法務相のスキャンダル報道を受けての辞任で解散総選挙を強行したのですが、このときは自民党が議席を減らしながらも政権を維持できました。旧統一教会の強いバックアップもあったし……というのは深読みしすぎでしょうが、今は自民党の重鎮は解散には反対でしょう。「今は逆風すぎて勝てない」という空気ができているからです。
『国会女子の忖度日記:議員秘書は、今日もイバラの道をゆく』 あの自民党女性議員の「このハゲーーッ!!」どころじゃない。ブラック企業も驚く労働環境にいる国会議員秘書の叫びを聞いて下さい。議員の傲慢、セクハラ、後援者の仰天陳情、議員のスキャンダル潰し、命懸けの選挙の裏、お局秘書のイジメ……知られざる仕事内容から苦境の数々まで20年以上永田町で働く現役女性政策秘書が書きました。人間関係の厳戒地帯で生き抜いてきた処世術は一般にも使えるはず。全編4コマまんが付き、辛さがよくわかります。