先日、学校法人日本女子大学(東京都文京区)が、生物学的には男性として生まれたが女性として生きるトランスジェンダー(病理学的に定義するところの性同一性障害)の学生を受け入れるかどうか、検討を始めたことがニュースとなりました。
本件については、(1)入学許可に肯定的な考え、(2)否定的な考えの双方があり、性別をめぐる複雑な議論がなされています。
女子大が入学を拒否する場合の法的問題
女子大が、学生の生物学的な性別を理由として入学拒否をすることに法的な問題はあるのでしょうか。この点、私立大学のような私的な団体は、「女子のみが入学できる大学を設立する」という自由思想が強く働くため、また、これらの権利を有するため、これらの大学に対し「男子も入学させよ」と強く要請することは困難です。
そのため、今回は国立大学を念頭に置いて議論を進めることとします(私立大学などの私的な団体には、後述する「憲法上の平等原則」はストレートには適用されません)。
さて、国立の女子大がトランスジェンダーの男子の入学を拒否した場合に生じる法律上の問題点として、以下のようなものが考えられます。
(1)憲法上の平等権(憲法第14条)の問題
(2)憲法上の教育を受ける権利(憲法第26条)の問題
憲法上の平等権(憲法第14条)の問題
憲法第14条は、「すべて国民は、法の下に平等で、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」と規定しています。
今回の事案では、生物学的に男性であることを理由に入学拒否がなされているため、「性別による差別」の問題が生じます。もっとも、憲法第14条が意味する「平等」とは、なんでもかんでも国民全員が平等、という硬直的な考え方によるものではなく、「相対的平等(各人の差異を前提としたうえでの平等)」と解されています(最高裁判所昭和39年5月27日判決)。
要するに、男性女性関係なく絶対に平等に扱うというわけではなく、たとえば「女性は出産をする」という変えられない事実(差異)を考えて、女性だけに「産休」を認めることは許されるということです。
この点、最高裁判所は、
(1)区別することの目的に合理的根拠が認められない場合(目的の合理性)、
または、
(2)その具体的な区別と目的との間に合理的関連性が認められない場合(区別と目的との合理的関連性)
には、差別は合理的とはいえず、憲法第14条違反になるという判断をしています(国籍法第3条1項違憲訴訟等)。