42年間ずっと客殺到の原宿「極上の喫茶店」…「特等席」カウンターから見える珠玉の光景とは
あまり知られていないが、4月13日は「喫茶店の日」だった。1888年のこの日、東京・上野に「可否茶館」という店が開業したのを記念して制定された。5年で姿を消した可否茶館は、資料が残る国内最古の店である。
それまでの「喫茶店」に代わり、「カフェ」という言葉が浸透したのは2000年代初めの「カフェブーム」の頃からだ。以前、「喫茶店」と「カフェ」の違いを業界関係者に聞き続けたことがあるが、結論は「ほぼ同じ意味で使われる。カフェとつけたほうが現代的なイメージになる」だった。面白いことに、店員が注文を取りに来て飲食も運ぶ「フルサービス」は喫茶店の代名詞で、セルフサービスは「セルフカフェ」というが、「セルフ喫茶」とはいわない。
国内の喫茶店(カフェも含む)店舗数は、1981年の15万4630店をピークに、最新調査の2014年には6万9983店に減った(総務省調査を基にした全日本コーヒー協会の発表資料)。全盛期の半分以下に減少してはいるが、09年は7万7036店、12年は7万454店で、下げ止まり傾向も見られる。スターバックスコーヒーやドトールコーヒーショップのような1100店超を展開する大手チェーン店が目立つが、総店舗数の大半は個人経営の店(個人店)で、日本のカフェ文化は個人店が支えてきた。
今回は、東京のハイセンスな街で長年人気の個人店を紹介したい。古さと新しさが共存する都内の老舗店の取り組みは、「温故知新」につながると考えるからだ。
原宿、広尾、自由が丘に3店舗を展開
「カフェ・アンセーニュダングル」という店が、都内の原宿、広尾、自由が丘にある。意味はフランス語で「角の看板」だそうだ。筆者は1店だけ知っていたが、店のこだわりについては、文筆家でカフェライターとして有名な川口葉子氏の著作物で学んだ。今回は別々の日に、自由が丘店と原宿店を訪れたが、もっとも古い原宿店の開業は1975年で、今年で42年になる。創業者の林義国氏は、現在は原則として85年に開業した自由が丘店のカウンターに立つ。この店が特筆されるのは、創業以来「接客哲学」を変えていないことだ。