イケてるゆるキャラ、イケてないゆるキャラ
――ヒーローショーが開催される前の喜楽総帥は、どのような状態だったのでしょうか?
笹井 鞍手町の商工会のキャラクターとして数年前に誕生したのですが、ネットで画像検索をしても数枚しか出てこない。つまり、ほぼ世に出ていない、みなさんに知られていない状態でした。
――認知すらされていなかったわけですね。ほかのゆるキャラたちの現状については、ご存じでしょうか?
笹井 最近ニュースで見たのですが、“クビ”になるゆるキャラも出始めているようです。「勝ち組」と「負け組」が明確に分かれてきているのが、ゆるキャラたちの現状なのではないでしょうか。
――「イケてる」「イケてない」など、ゆるキャラについての持論があれば教えてください。
笹井 行政側が「このゆるキャラを売り込む」と決めて、後先を考えて動いている場合はイケてます。逆にイケてないのは、着地点のないゆるキャラです。着地点があるかどうかで、そのゆるキャラの運命は決まる気がします。
――喜楽総帥の再生をきっかけに、ほかのゆるキャラに関する相談が持ち込まれることなどはありますか?
笹井 近郊の自治体から、お話をいただいています。
なぜ悪役に特化?「悪の秘密結社」誕生秘話
――ヒーローショーの定期公演など、この事業を始めようと思ったきっかけについて教えてください。
笹井 高校時代から、ヒーローショーのアルバイトをしていました。その後、時計店や広告代理店に勤務したのですが、どうしてもヒーローショーのことが頭から離れず、時計店勤務時代は「ウォッチマン」というヒーローを非公認でつくるなど、どの職に就いてもヒーローショーとつなげてしまっていました。そして、「ヒーローショーをやらない僕の人生なんて、意味がないんじゃないか」と思ったのです。
――悪役に特化した悪の秘密結社を立ち上げたのは、なぜですか?
笹井 正義の味方やヒーローを演じるほうが、共感を得やすいし、楽しいし、素敵だと思います。しかし、前職の影響から、「世の中になく、余っていて、無駄になっているものは何か」を考えた結果、「悪」のカテゴリ、つまり悪役に特化しようと決めました。
また、幼少期に実の父親と生活を共にすることがなかったため、男性の大きな背中を見て育ったり、目を見て語られたりといった経験がありません。今思えば、ヒーローに父親の代わりを求めた瞬間から、ヒーローが好きになったのだと思います。
子どもたちにとっての本質的なヒーローは両親だと思いますが、それはアイドルや上司でもよくて、「人の数だけヒーローがいる」と考えるようになりました。「そんな世の中の人たちに、ヒーローを体現したい」「そのためには悪役が必要なのでは」と考えたのです。また、ヒーローショーのノウハウを持っていたので、それを「世の中に広めるためのテクニックとして使おう」と考えました。