2017年に入り、世界の金融市場では価格変動性=ボラティリティーの低下が続いている。株式や債券、為替などの金融市場は一様に変動率が下がっている。ボラティリティーが低いということは、市場参加者の期待や思惑が一方向に偏り、先行きに対する見方のばらつきが小さいことを示唆する。先々の展開を冷静に考えると、米国の政治、北朝鮮問題など、不安材料は少なくない。それでも、かなりの数の投資家が先行きを楽観しているようだ。
このなかで、株式や債券などの伝統的な金融資産(アセットクラス)に加え、新しい通貨の価値も急騰してきた。それが、“仮想通貨”だ。ビットコインを筆頭に、数多くの仮想通貨が取引され、その価値がドルなどに対して上昇しているのである。
年初来から、ビットコインはドルに対して180%近くも上昇した。そのほかにも、イーサリアムやライトコインなどの仮想通貨がドルに対して数倍、数十倍もの急騰を記録している。国内でも、ビットコインの取引を容易にすると期待されてきた新技術を搭載したモナーコインの価格が4月以降の1カ月程度の間で400%程度上昇したことが注目を集めた。
世界の金融市場が膠着するなか、仮想通貨の急騰は説明しづらい。注目されている技術などへの期待があることは確かだ。それでも、ビットコインなどの急騰は行きすぎではないか。以下では、仮想通貨の概要を確認したうえで、今何が注目を集めているか、今後の展開がどうなるかを考察する。
新たな投機性商品=仮想通貨
仮想通貨は、かなり以前から存在してきた。その存在が大きな注目を集めるようになったのは、09年にビットコインの取引が開始された後だ。ビットコインの取引は、ブロックチェーンと呼ばれる分散型の情報システムの運用が実現したことに支えられている。ブロックチェーンを理解することは、ビットコイン、その他の仮想通貨を理解する第一歩だ。
今日の情報管理は、1カ所に巨大なサーバー(情報の集積場所)を設置する中央集権的な発想に基づいている。この場合、サーバーがダウンした際にバックアップのサーバーを別の箇所に設置する、メンテナンスの人件費などがかさむなど、何かと負担が大きい。