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垣田達哉「もうダマされない」

年末、鶏肉が高騰・卵が品不足の懸念、鳥インフル拡大で…狙い目は和牛の中クラスか

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表
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「Getty Images」より

鶏肉が高騰する可能性

 11月に入り、国内での高病原性鳥インフルエンザが頻発している。11月5日に香川県で第1例目が発生してから、福岡県、兵庫県、宮崎県、奈良県、広島県と相次いで発生が確認され、12月8日現在、6県で19例が確認されている。香川県10例、宮崎県5例、福岡県と兵庫県、広島県が共に1例である。1カ月もたたないうちに、西日本で6県17例に広がるというのは、感染拡大のペースが速すぎる。6県19例で殺処分された鶏は、236.7万羽にものぼり過去最高となっている。

 6県のなかでも全国の消費者にとって一番心配なのが宮崎県だ。わずか8日間で5農場と、発生の連鎖が止まらない。宮崎県は、肉用若鶏(ブロイラー)の飼養羽数が日本一。12月1日に日向市、2日に都農町、3日に都城市、7日に都城市、8日に小林市と、毎日離れた地域での発生が確認されている。

 発生した地域では、養鶏場の半径3km以内の移動制限区域では少なくとも21日間は移動ができなくなり、3~10km以内の搬出制限区域では、少なくとも10日間は区域外への搬出ができなくなる。

 12月2日に発生が確認された宮崎県都農町の場合、発生した農場の移動制限区域内では約87万羽、搬出制限区域では約546万羽が飼養されている。移動制限区域内の87万羽は、防疫措置が完了後21日間新たな発生がない限り出荷はできない。546万羽は防疫措置が完了後の10日後に、すべての農場での検査結果が陰性にならなければ制限区域外への出荷はできない。12月1日に発生が確認された日向市の場合、搬出制限区域内では約78万羽が飼養されている。

 このまま宮崎県全体に感染が広がると、宮崎県から全国への搬出ができなくなるので、日本全体の国産鶏の出荷量がかなり減ることになる。隣の鹿児島県は、肉用鶏の飼養羽数は宮崎県に次いで全国2位。鹿児島県まで感染が広がると、国産鶏の供給が相当数減ることになる。

 それでなくても、今年の鶏肉の市場価格は、例年に比べて高くなっている。新型コロナウイルスの影響で外食産業の需要は減っているが、ブラジルやタイからの輸入量を減少させることで供給量が調整されている。

 一方、巣ごもり需要は続いているので、小売店などでは、牛肉や豚肉より安価な鶏肉の人気が高く、鶏肉(もも肉、むね肉)の市場価格は、5月以降毎月のように昨年比で10%以上値上がりしている。外食産業での需要が下がっても輸入量を減らすことで、鶏肉全体の供給量のバランスを取っているので、鶏肉が市場でだぶついているわけではない。そのため、小売店などでも鶏肉の値下がりは起きていない。

 鶏肉の自給率は、64%と食肉のなかでも一番高い。しかも、家庭での消費は国産鶏のほうが多いので、輸入鶏肉が減少しても市場価格への影響はほとんどない。そのため、鳥インフルエンザの影響で国産鶏の供給が少なくなれば、当然、小売店などの店頭価格は高騰することになる。クリスマスから年末年始は、一年でももっとも鶏肉の需要が高い時期だ。しかも今年は、コロナ禍で年末年始の飲食店での忘年会や新年会需要が極端に減り、家庭での需要が大幅に高くなるだろう。そうなると、小売店などでは店頭価格を下げなくても売れる。

 ケンタッキーフライドチキンも、100%国産鶏を使っている。唐揚げブームもますます加熱している。鳥インフルエンザの感染がこれ以上広がると、国産鶏の奪い合いになりそうだ。宮崎県の3養鶏場は、いずれも肉用鶏しか飼養していないが、西日本では採卵鶏も数多く飼養されている。感染が拡大すれば、その地域では卵も不足気味になるだろう。

豚肉の値上がりはすでに始まっている

 豚肉も、新型コロナウイルスの影響で外食産業の需要は減ったが、やはり輸入量を減らすことで市場への供給量を調整している。そのため、市場では豚肉がだぶつかない上、巣ごもり需要は依然として高いので、店頭での市場価格は昨年に比べ10%以上高くなっている。

 豚肉は、牛肉や鶏肉と比べ家計消費(食肉店や量販店などで販売される精肉の消費量)が多く、全体の5割を占めている。牛肉は約3割、鶏肉は約4割である。それがコロナの影響で家庭消費が一段と増えている。コロナ禍の4~9月の卸売価格は前年比12.1%も上昇している。

 10月からのGo To イートキャンペーンで、10、11月の外食需要は増えてきたが、12月は感染の第3波の影響で外食産業は大きな痛手を受けている。このまま年末年始を迎えると、ますます巣ごもり需要が高くなるだろう。

狙い目は和牛の中クラス

 鶏肉と豚肉は、年末年始に向けて、今以上に値上がりする可能性が高い。一方、外食需要がもっとも大きい牛肉は、第3波が収まらない限り、家計消費が一段と増える年末年始のかき入れ時に、食肉のなかではもっとも影響が甚大になるだろう。

 そうなれば、和牛などの高級肉の店頭価格もかなり安くなるはずだが、年末年始は高級肉の需要が一年で一番高い時期なので、思ったほど安くはならないだろう。ただし、全体的に和牛余りの状況になるので、最高ランクのA5クラスは値崩れは起きないだろうが、A4、A3クラスの和牛は、高値では販売が難しくなる。しかも、年末年始需要を逃すと、年を越してからは市場が急速に冷える可能性が高いので、おそらく普段よりお手軽な価格で販売される可能性が高い。

 豚肉と鶏肉は年末年始に向けて店頭価格も上がっていくだろうが、和牛などの国産牛は年末年始需要を逃せば次がない。狙い目は、和牛の中クラス。年末年始は、巣ごもりで和牛や国産牛をいっぱい食べられるかもしれない。

(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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