2020年の3月に発売から45周年の節目を迎えた、まるか食品の『ペヤングソースやきそば』。税込212円というお手頃価格ながら、内容量120gを誇るコスパの良さ、何よりその美味しさで、カップやきそば界の金字塔的存在として長らく愛されてきた。
そんなペヤングは近年、度を越した激辛ぶりが話題を呼んだ『ペヤング獄激辛やきそば』(税込225円)に代表される奇抜な味付けや、他に類を見ない大容量も注目ポイントのひとつとされている。こうした流れのなかで、2020年11月16日に発売されたのが、シリーズでも最大容量とカロリーを誇る、税込1078円の『ペヤング超超超超超超大盛やきそばペタマックス』だ。
話題沸騰中の本品だが、そのあまりの巨大さからか、一部では冗談めかした“健康面への心配”すらささやかれている。そこで本企画では1万8000人以上の栄養相談を受けてきた管理栄養士の浅野まみこ氏に、ペタマックスの栄養について解説してもらったほか、筆者による実食レビューにも挑戦してみた。
管理栄養士に聞く“ペタマックス”のド派手すぎるカロリーと実態
まずは、そもそも成人男性・女性が1日に摂取する目安のカロリー、そしてベーシックな『ペヤングソースやきそば』のカロリーなどについて聞いた。
「例えば、30歳から49歳の男性であれば1日2700kcal、同年代の女性であれば2050kcalが1日の摂取カロリーの目安とされています。ですからカロリーが544kcalのベーシックなペヤングであれば、1日の1食として取り入れることは大きな問題はないでしょう。ただ、どうしてもカップ麺なのでカロリー以外の栄養バランスは偏ってしまいます。例えば同商品は食塩相当量が3.6gなのですが、日本人の1日の平均塩分摂取量の目安は7.5g未満とされているので、1食でかなりの塩分摂取量にはなりますね。重要なのはほかの食事でその過剰分をカバーするようにできるかどうかです」(浅野氏)
ではパッケージで「絶対に1人で食べないでください。」とまで謳われているペタマックスはどうなのだろうか。
「結論からいうと、1日で食べても大丈夫ですよ。ペタマックスはカロリーが4184kcalなので、ランニングでいえば体重60kgの人なら、70km走れば消費できます。フルマラソン約1.5回分だけです。楽勝ですね!(笑)
まあこれはその距離走れる方の場合。多くの方はそうもいきませんよね、ですので一般的な方で見ていきましょう。そうすると、男女共に先ほどの年齢層の1日の摂取目安量からは大幅にオーバーはしています。男性の場合は1日分の約1.5倍のカロリー、女性にいたっては1日分の約2倍のカロリーということになります。塩分でいえば食塩相当量が24.6gということなので、一般的な食事3日分の塩分量というわけです。
ただ、実をいうと1日に4000kcalほどたくさん食べる人も少なくないので、食べたからといって直接的な健康被害がすぐに出るわけではないと思います。塩分も同様です。ただ、激しく喉は乾くでしょうし、健康バランスも偏るので、確かにこれを1食で食べるのはおすすめしませんね」(浅野氏)
カロリーや塩分量に加え、糖分の量などもネット上では不安視する声もあるが、問題ないのだろうか。
「確かに本品には大量の炭水化物、つまり糖分が含まれているので、食べ過ぎると血糖値が高くなってしまい、その乱高下が続けば血管の炎症が誘発され、糖尿病につながってしまう危険性はあります。ただ、当たり前ですが食品なので“食べたらいけないもの”ではありませんし、健康的な人間であればまず食べても被害は起こらないでしょう」(浅野氏)
そしてペタマックスを“仮に一人で食べる場合”における、健康的に食べる目安やアイディアについて聞いた。
「まず1食で食べ切ろうとするのは避けたほうがいいでしょう。その際、他の食事とのバランスを考えると、ベーシックな『ペヤングソースやきそば』1回分ほどの量を1日3食のうちのいずれかに食べ、7日間ほどかけてみるのはどうでしょうか。ただ、日をまたいでしまうと味的に劣化してしまう可能性もありますが……」(浅野氏)
浅野氏はこのほかにも、1食での栄養バランスを考えるなら、ペヤングの糖質をうまく循環させられるビタミンB1を多く含む豚肉や牛肉などの肉類、さらに急激な血糖値の上昇を抑える食物繊維も一緒に摂取するのがおすすめだと教えてくれた。
ペタマックスを実際に食べてみた
では、いよいよ実食していこう。今回は健康に注意を払いつつ、筆者一人でペタマックスを食べてみる。
本品を目の前にしてみると、改めてその大きさに圧倒されてしまう。長さ15cmの一般的なボールペンと比べてみると、その大きさが伝わるだろうか。
蓋を指定の線の位置まで半分引き剥がし、入っている「かやく」「液体ソース」「ふりかけ&スパイス」の小袋を取り出す。ベーシックなペヤングに同封されている調味料の約2倍と思しき「かやく」と「液体ソース」が、2袋ずつ入っていた。
蓋を開けてみると、容器の中にはフライ麺のブロックが合計4つ入っていることがわかった。混ぜやすくするための工夫ということなのだろうか。いずれにせよ凄まじい分量なことに変わりはない。
調味料を取り出したら、事前に沸かしておいた合計2200mlもの大量のお湯を注ぎ込む。意外にもベーシックなペヤングと同じく、待ち時間は3分である。3分後、巨大な湯切り部分の蓋を引き剥がし本体を持ち上げてみると、容器が若干たわむほどの重さ……衝撃的だ。
慎重に湯切りをし、調味料をすべて混ぜ合わせ、ついにペタマックスが完成。香ばしいソースとフライ麺のまろやかな香りがあたりに立ち込める。いざ実食。
噛み締めると「さすがペヤング」といった感じで、液体ソースの甘みと酸味、スパイスの刺激、そしてコクのある麺が渾然一体となり、夢中で食べ進めてしまう美味しさが口に広がった。
しかし、しばらく食べ進めるうちに口の中の水分が瞬く間に奪われ、たまらず水を飲むと、あっという間に腹が膨れ上がってしまった。「食べ始めたばかりなのになぜ……?」と疑問に思ったのだが、この現象、ペタマックスがあまりに大きいがために、自分が相当量食べていることが自覚できない錯覚を起こしたのが原因ではないかと考えている。ペタマックス、おそるべしである……。
早々に1回での完食を断念した筆者は、残りをタッパーに移し、冷蔵庫で保存しながら4日ほどかけて完食。浅野氏の提案では7日とのことだったが、同氏が危惧した通り、麺が伸び、ソースの風味が驚くほどに減退していたので、早めに食べ切らせていただいた。その際、浅野氏のアドバイスに従い、コンビニのカットキャベツに火を入れたものを追加したのだが、そのおかげで美味しく完食することができた。
まさに“限界を超えた”容量のペタマックス。筆者のように無理して一人で食べるのではなく、友人や家族とシェアしてその日のうちに美味しく食べ切るのが正攻法といえるのかもしれない。
(文=TND幽介/A4studio)