日本たばこ産業(JT)のテレビCMは、国際的なルール違反なのか――。
塩崎恭久厚生労働大臣(当時)は、7月19日に放送された「Yahoo!みんなの政治」の『【政治ライブ】「受動喫煙対策」をどう考える、塩崎厚労相に聞く』【※1】のなかで、以下のように語っている。
「日本はWHOの『たばこ規制枠組み条約』の批准国です。この中に、たばこ生産会社は政策に影響を与えてはいけない、宣伝もしてはいけないということになっている。
日本ではJTのテレビCMが平気で流れている。これは世界から見ればびっくりする話なんです。たばこそのものの宣伝はしていませんが、喫煙ルームを映していますから、事実上たばこの宣伝と同じです。これは条約違反と言わざるを得ません。
条約を仕切っている外務省が、きちっと、たばこ業界の監督官庁である財務省に言わなければいけないんだと思います」
塩崎氏が言及しているのは、世界保健機関(WHO)の「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」(以下、たばこ規制条約)【※2】だ。日本は2004年3月に署名し、05年2月に発効された。
JTはテレビCMで分煙や喫煙マナーについて啓発を行っている。「ひとのときを、想う。」というキャッチコピーを耳にしたことのある人も多いだろう。しかし、それらの広告展開について、在職中の厚労相が苦言を呈したことになる。名指しされたJTに見解を求めたところ、以下のような回答を得た。
「弊社では、マナー広告や企業広告は、会社の姿勢などを広く一般の方々に訴求するための重要な手段であり、製品広告とは目的、訴求内容ともに異なるものと理解しております。今後とも、製品広告や喫煙奨励との誤解を受けないよう十分配慮しつつ、引き続き適切な訴求を行ってまいる所存です」(JT・IR広報部)
財務省、外務省も「問題なし」の姿勢
では、塩崎氏も指摘しているように、たばこ業界の監督官庁である財務省はどうか。
「ご指摘の報道があることは承知しておりますが、塩崎議員の発言について、コメントすることは差し控えさせていただきます。その上で、JTの広告と『たばこ規制条約』の関係につきましては、条約を所管する外務省に問い合わせください。
製造たばこにかかわる広告につきましては、たばこ事業法第40条や同法に基づく指針で規定しており、JTの広告は、これらの規定に服しているものと考えております」(財務省広報室)
財務省が言及する、たばこ事業法第40条および同条第2項に基づき、財務省から「製造たばこに係る広告を行う際の指針」が04年3月に告示されている。
同指針では、たばこ広告のほかに「喫煙を促進させるような販売促進活動等」も規制の対象としているが、「喫煙を促進しないような、企業活動の広告並びに喫煙マナー及び未成年者喫煙防止等を提唱する広告」などについては、対象外とする旨が明記されている。JTおよび財務省は、これに基づいて広告展開を行っているという姿勢だ。