加えて、条約を所管する外務省にも話を聞いた。
「『たばこ規制条約』の第13条(たばこの広告、販売促進及び後援)3項には、以下のような文言があります。
『自国の憲法又は憲法上の原則のために包括的な禁止を行う状況にない締約国は、あらゆるたばこの広告、販売促進及び後援に制限を課する。この制限には、自国が利用し得る法的環境及び技術的手段に従うことを条件として、自国の領域から行われる国境を越える効果を有する広告、販売促進及び後援の制限又は包括的な禁止を含める。この点に関し、締約国は、適当な立法上、執行上、行政上又は他の適当な措置をとり、及び第二十一条の規定に従って報告する』
外務省としては、我が国は、関係国内法令により、同条の義務を国内的に実施しているという認識です」(外務省国際保健政策室)
「喫煙ルームが映るから条約違反」は誤解?
JT、財務省、外務省のいずれも「問題なし」という姿勢だ。これについて、法律のプロはどう判断するのか。弁護士法人ALG&Associates執行役・弁護士の山岸純氏に聞いた。
「『たばこ規制条約』は、まず第1条(c)にて、『たばこの広告及び販売促進』について、『商業上行われるあらゆる形態による情報の伝達、奨励又は行動であって、直接又は間接に、たばこ製品の販売若しくはたばこの使用を促進することを目的とし又はたばこ製品の販売若しくはたばこの使用を促進する効果を有し若しくは有するおそれのあるものをいう』と定義しています。
その上で、第13条第2項にて、『締約国は、自国の憲法又は憲法上の原則に従い、あらゆるたばこの広告、販売促進及び後援の包括的な禁止を行う』と定めています。
他方で、第13条第3項は『自国の憲法又は憲法上の原則のために包括的な禁止を行う状況にない締約国は、あらゆるたばこの広告、販売促進及び後援に制限を課する』とも定めています。
ところで、日本国憲法は第22条で『営業の自由』という権利を保障していますし、第21条では『表現の自由』という権利を厚く保障しているので、条約の第13条第2項をそのまま適用して『包括的な禁止』を行うことは無理でしょう。
そのため、条約の第13条第3項を適用して『あらゆるたばこの広告、販売促進及び後援に制限を課する』のが、日本国における『たばこ広告の規制』の現実的なところだと思います。
次に、『たばこ規制条約』は最低限、次のことなどを実施するよう求めています。
(1)虚偽の情報などで、たばこが健康に悪くないという広告などをしない
(2)すべてのたばこの広告などに健康を警告する情報を設ける
(3)たばこを買いたくなる、買いやすいような仕組みを制限する
(4)ラジオやテレビでのCM、広告などを制限する
たとえば(2)については、たばこの箱に『ニコチンにより健康に対する悪影響があります』などの文言を記載すること、(3)については、未成年者が自動販売機などで簡単にたばこを買えなくする、などの施策を意味します」(山岸氏)