「ザ・プリンス・パークタワー東京」
(『Wikipedia』より)
これに対して西武HDの経営陣は、TOBについて断固反対する姿勢を見せ、両社の対立は熾烈さを増している。
2012年10月12日付で、西武HD社長・後藤高志宛てに一通の手紙が送られてきた。送り主は米投資ファンド・サーベラスCEO、スティーブン・ファインバーグ。5月末ごろより両者の意思疎通がうまくいかなくなっていることへのいら立ちから、ファインバーグ自らが手紙を送付した。
4月と10月に証券会社から取得した西武HDのバリュエーション(株価評価)に、齟齬があったという。手紙には、「西武の現在の経営改善計画の促進及び拡充」など3つのカテゴリーに分類された、西武HDに対する47項目の改善策が記されていた。
「改善策には多摩川線、山口線などの廃止や、西武ライオンズの売却、ホテルレジャー事業の改革などが書かれていました。ホテルの改革ではサービス料金の引き上げや、ゴルフ場の売却などが記されていました。そしてこのレターには、改善策を投資家に開示することを求めていたのです」(西武HD関係者)
そしてその後もファインバーグから後藤社長宛てに「西武はディスクロジャーとプレゼンテーションを改善し、経営改善を継続し、サーベラス及び参加を希望するその他のあらゆる株主を上場手続き及びチームに完全に組み込むために、本レター及び私の従前のレターにおいて要点を示した措置を実施することを確約しなければなりません」「私のレターにおいて提示した内容を貴殿とそのチームが即座に受け入れることを期待します」と書かれた手紙(2013年1月11日付け)が送られ、西武HD経営陣に改善策の実施を強く求めたという。
この間、西武HDは、
(1)都市交通・沿線事業:通勤時間の特急の増便、西武ドームへのスペシャルイベントの誘致、電力使用の効率化 その他
(2)ホテル・レジャー事業:イールドマネジメント(収益管理)の向上による客室単価の改善、集中購買、集中予約センターの設置
などはアドバイスを参考に実施したという。しかしすべての要請が受けられるわけではない。
「都市交通・沿線事業で少なくとも1045人のうち、80人の駅員削減要請や、多摩川線や山口線、国分寺線、多摩湖線、西武秩父線の廃止などは受け入れられません。客室・レストランのサービス料の値上げやゴルフ場の売却、西武ライオンズ球場や西武建設の売却などもそうです」(西武HD関係者)
さらに西武HDが問題視したのは、品川・高輪地区の再開発に関する項目だった。サーベラスはこの事業計画などを、西武HD上場の際の目論見書に盛り込むよう手紙に記していたという。
「前々から田町の車両センターに駅をつくるプロジェクトや、品川駅高輪口の道路拡張工事など品川・高輪地区の再開発は話題になっていましたが、西武HDが主体ではありませんから、これがいつ、どのようなかたちで行われるのかわかりません。そんなものを前提にした事業計画書などを目論見書に盛り込んだら、偽計取引に問われる恐れもある。関係者はこれを見てびっくりしていたようです」(西武の内情に詳しい関係者)
●かみ合わない両社の主張
一方でサーベラス側に近い関係者の言い分はこうだ。
「西武球団の売却や路線廃止などを強要しているかのように言われていますが、ファインバーグはあくまでも、話し合うための課題を列挙しているにすぎません。長い間、西武HD経営陣と株主の意思疎通が図られていないから、それをきちんとやりましょうよ、と言っているにすぎません」(サーベラスに詳しい関係者)