大人の嗜みの代名詞ともいえるワイン。デートでオシャレなレストランを訪れた際、高いワインの1本でも空ければ、男としての株も大いに上がるのではないだろうか。
だが、いくら新品のワインでも、一定数「ブショネ」と呼ばれる不良品が潜んでいるという。ブショネとはいったいなんなのか。ソムリエであり、ワイン、ビール、焼酎、日本酒などのトータル飲料コンサルタントである友田晶子氏に話を聞いた。
ブショネのワインは交換可能
「フランス語で『ブション』とはコルク栓のこと。木でできているコルクには、目に見えない穴がたくさん空いています。そこにカビなどの微生物が発生してワインにうつってしまい、ワインを劣化させてしまうことを専門用語で『ブショネ』(コルク臭)と呼ぶのです。程度にもよりますが、ブショネの状態のワインは、ニオイからしておかしくなります。ミカンを積んでおくと、下のほうが青くカビてきますが、あのようなカビ臭さを放つのです」(友田氏)
もし自分がワインを注文した際、それはブショネのワインかもしれない。そんなときのために有効な対策を知りたいところ。
「もとの味や香りを知っていないと、ブショネと判断するのは難しいですが、ひとつコツとして、時間を置くという方法があります。開けたときにニオイなどで違和感を覚えたら、グラスに注いでしばらく放置しておくと、より香りが悪くなってきますので、そうなったらお店の人に言いましょう。ブショネのワインは、無料で交換してくれますので」(同)
伝統と実益の狭間で生まれる葛藤
プロのソムリエやよほどの愛好家でないとニオイだけで即座に判断するのは難しいようだが、ひどいブショネになると、本来の味が著しく損なわれるとのこと。そして、このブショネの厄介なところは、どんな高級ワインにも起こり得ることだという。
「ブショネになってしまう確率は100本中5~8本程度、軽度なものも含めると全体の約10%がブショネになっているといえます。そして、それは何百万もの値打ちがあるワインでも例外ではないのです。世界のワイン市場は、このブショネによって1兆円近くの損失があるといわれています」(同)
そこまで大きな影響が出ていながら、業界の人々は対策をしないのだろうか。
「対策として、最近ではコルクを使わずにスクリューキャップを用いたり、合成樹脂のようなものを使って栓をするワインも増えてきました。高級ワイナリーでも、コルクの代用品で熟成させる実験も行っています。ですが、伝統やイメージを優先してコルクにこだわるメーカーも依然として多いのが現状です」
受け継がれてきた伝統を大事にするか、それとも、現実的に利益を優先するのか、携わるものにしかわからない苦悩が、現在のワイン業界の間で広まっているようだ。
(取材・文=編集部)