ケース2:投資は悪?
いわゆる事業承継問題は、国家として対応しなければならないと認識されています。筆者は事業承継で複数の会社を引き継いだ時点で自己資金が枯渇しつつあった際、某金融機関が事業承継を目的とした融資制度を設定しているという情報を知り、相談に行きました。
担当「身内や社員に後継者のいない会社を、関係者でも同業者でもない他人のあなたが買う? それは、投資に当たりますね」
筆者「え? いわゆる投資会社とは異なって、売却前提ではなくて保有することを目的にしています。ちょっと違うようなニュアンスは感じますが、言葉の定義がそうであれば、そうだと思います」
担当「ですよね。では、ダメです。投資なんかに融資はできません」
筆者「事業承継の問題が顕在化した会社を譲り受けることが目的ですが……。この融資は、そうした目的の融資ではなかったんですか?」
担当「目的はそうですが、いずれにせよ、ダメですね。他人であれば、同業他社を買収する以外はほぼ認めません。ラーメン屋を譲り受けるなら、あなたが財務に問題がないラーメン屋だったら融資できるということです。それ以外はダメです」
筆者「でもたとえば、いま検討している会社様はオーナーが病気で急に動けなくなり、まだ経験が浅い後継者・ご子息の育成もしつつ株を引き受けてほしいと言っていて、それを引き受けようとしています。そのための資金です。また、私自身では投資会社の社員として企業再生をやってきましたし、独立後も再生実績はできています。制度の主旨からして、それでもダメなんですか? 個人保証や担保の提供をするのでも、条件によっては構いません」
担当「内容なんて関係ありません。とにかく、投資なんて不確実なものには貸せないんです」
以上がその金融機関の担当者とのやり取りです。事業承継の事案は増えることが見えているため、安いコストで資金調達できれば機会を広げられると期待してしまっていました。予想を超える対応に面食らってすごすごと帰り、世の中の厳しさを思い知らされました。
ケース3:保全が第一
筆者の知人が株主になっている会社では、代表者が個人保証を入れることで融資を受けていました。もともと業績が悪い状態で支援して出資した経緯もあり、過剰債務に陥っている状態で再建中でした。その会社のメイン銀行の担当者はずっと協力的な若手行員だったのですが、定期的な異動慣行によりベテラン行員に変わりました。担当が変わる連絡は受けていたものの、特に音沙汰もなく1~2カ月が過ぎていたそうです。