9月21日から24日にかけて、千葉・幕張メッセにて開催されたアジア最大規模のゲーム展示会「東京ゲームショウ」(以下、「TGS」)。編集部は開催前々日から設けられている設営準備日より取材する機会を得たため、本記事ではTGSの裏側を紹介するとともに、今年の注目情報をピックアップしつつレポートしていきたい。
コナミの盛り返しと、一歩先へ進むVRに注目
昨年のTGSはPlayStation VR発売直前というタイミングもあり、VR技術を用いた作品への期待感と注目度が極めて高く、来場者数もそれを裏付けるかのように過去最高となる27万1224人を記録。家庭用ゲームはもちろん、スマートフォンやPCなど数多のプラットフォームで展開する最新ゲームが一堂に会する場にあって、“VR技術”そのものが主役と言っても過言ではないイベントとなっていた。
それから1年が経ち、VRへの関心が一旦落ち着いたこともあってか、今年の合計来場者数は25万4311人と減少してしまった。特にビジネスデイ初日の総来場者数は昨年が3万1399人なのに対し、2万6564人と大きく減少。だが、電車の遅延もあったほど当日の天候は不安定であった影響もあったことだ、なにより実際に会場へ足を運んだ方ならば、VRにまだまだ勢いがあることを感じ取ったのではないだろうか。
たとえば、株式会社コナミデジタルエンタテインメントではVRに対応した『ラブプラス』の新作を出展し、「ついに画面の中から彼女が出てきた」と注目を集めていたほか、『ANUBIS ZONE OF THE ENDERS』の4KおよびVR対応リマスター版も、試遊に長蛇の列ができる盛況っぷりを見せていた。
昨今のコナミといえば、『メタルギア』シリーズの監督だった小島秀夫をはじめとするクリエーターたちとの確執が報じられ、ゲーム関連事業に対しても消極的な印象も強かった。しかしながら、かつて社会現象を巻き起こした恋愛シミュレーションゲーム『ときめきメモリアル』シリーズに連なる新作『ときめきアイドル』を打ち出してきたことからも、過去の人気IPを利用して盛り返そうとする勢いを今年のラインナップからは感じることができた。
VR/ARコーナーでは、韓国のSANGWHA社による大型VRアトラクション『GYRO VR』や、アニメ『装甲騎兵ボトムズ』をモチーフとした『VR-ATシミュレーター 装甲騎兵ボトムズ バトリング野郎』(HTC Corporation)など、VR技術を用いた体感型の作品はブースに人だかりができていた。昨年はとにかくVR空間内でデバイスを動かすような、いわば「VR技術に振り回される」ゲームが多かった印象を受けるが、今年はVR技術を専用のデバイスと組み合わせ、より明確な方向性を持ったゲームとして仕上げているメーカーが多かったように思う。
ちなみに、毎年女性向けの参加型のアトラクションを展開しており、昨年『椅子ドンVR』で注目を集めた株式会社ボルテージは、キャラクターとの挙式が楽しめる「挙式VR」を今年は出展。先述したコナミの『ラブプラス』もそうだが、こうしたシミュレーションゲームとVR技術の親和性はやはり高いことを再認識させられるコーナーとなっていた。
趣の異なるビジネスデイ、過激なパフォーマンスで即日中止になったイベントも
ビジネスデイとパブリックデイは対象としている層が異なるため、当然ながら集まる人や開催されるステージイベントの方向性にも差異がある。中国に本拠地を置くオンラインゲーム企業、KONGZHONG/空中网などはパブリックデイにコンパニオンを集めた華やかなランウェイイベントを開催していることで知られるが、一方ビジネスデイには現在の中国発スマートフォンゲームの売上の推移や状況などの考察・発表を行っていた。また、そうした発表資料は名刺との交換により配布されているなど、ビジネスデイとパブリックデイの違いを見ることができる。
コンパニオン絡みのステージイベントといえば、今回のTGSではその過激さから、運営から注意が入ったものも。株式会社インティ・クリエイツブースにて出展されていたシューティングゲーム『ぎゃる●(●は星)がん2』のイベントにて、ゲーム中の雰囲気の再現としてコンパニオンのスカートをうちわで扇いでめくるというイベントを行っていたのだが、ビジネスデイ2日目となる22日からは中止となっていた。
ゲーム中の1シーンの再現とはいえ、スタッフもファンもコンパニオンのスカートを喜々として覗き込む姿は、たしかに展示会の場には不釣合いな異常な光景と言えるかもしれない。なお、かつて「TGS2010」にて販売元のアルケミストよりシリーズ第1作『ぎゃる●がん』が出展された際も水鉄砲でコンパニオンを濡らすイベントが事務局より注意され、続くイベントが中止となったことがある。TGSにはコンパニオンの撮影を目的とする来場者も多く、今回のイベントを楽しみにしていたファンもそれなりにいたとは思うが、イベントそのものを中止せざるを得ないような内容では誰も喜ばない結果を招くということを意識してほしいところ。
もちろんこうしたイベントが何でも注意されるというわけではない。株式会社ディースリー・パブリッシャーでは、同社の人気シリーズ『DREAM C CLUB』を原作とする2.5次元ユニット「劇団ドリームクラブ」のスペシャルライブをはじめ、多くのイベントを開催している。昨年で言えば『スクールガールゾンビハンター』中の再現としてコンパニオンの衣服を破くパフォーマンスや、ステージ上での水着への生着替えなどが話題に。
今年は生着替えに加えて、ラジコン戦車を用いた足元からの写真撮影などを行っていた。しかしながら、同社は毎年こうしたイベントを開催しているし、事務局より注意されたという話はない。華やかなステージの裏には、見せ方や観客の誘導などを徹底し、抜かりなく準備を行ったであろう慎重さがうかがえる。大歓声の巻き起こったスペシャルライブをはじめとして、今回のTGSで行われたディースリー・パブリッシャーのステージイベントはすべて「ニコニコ動画」および「Youtube LIVE」にてログを観ることが可能となっている。最新作の情報チェックにはもちろん、劇中のダンスを再現しきった劇団ドリームクラブのライブは2.5次元ユニットのファンならば一度観ておいて損はないだろう。
また、今回のTGSではインディーゲームコーナーでも一騒動があった。出展していたブースの多くで設置されていた「Nintendo Switch」販促用の赤い箱がビジネスデイ2日目以降撤去される事態となった。設置していた企業の関係者によると、TGS運営サイドの人間から直接そのように指示があったとのこと。この騒動はTwitter上でも取り上げられ、“業界の闇”として話題になっているようだ。というのも、TGSに任天堂株式会社は不参加であり、インディゲームコーナーにはスポンサーとしてソニー・インタラクティブエンタテインメントジャパンアジアが加わっているからであろう。「不参加企業の販促物を置くのはいかがなものか」「他のハードのPOPが無い中でNintendo SwitchのPOPだけがあるのは問題」という声も挙がっている。
ミサイルを想定しての避難訓練? 知られざるTGSの裏側
ビジネスデイが2日間、パブリックデイが2日間、計4日にかけて執り行われるTGSだが、開催前にさらに2日間、準備日が存在することは意外と知られていない。会場である幕張メッセでは開催2日前の9月19日から、各ブースの設営が行われていた。今年最も存在感を放っていたであろう、株式会社カプコンの『モンスターハンター:ワールド』ブースの密林のようなセットも、当たり前ではあるが、人の手によって一から組み上げられているのである。
また今年の準備日で特に印象的だった出来事をひとつ紹介しておきたい。北朝鮮がミサイル発射実験を頻発していることから、ミサイルが発射された場合を想定しての避難訓練が実施されたのである。専用アナウンスが流れ、会場内にはやや緊張した空気が張り詰めた。このような瞬間にも、単なるゲームの祭典ではないTGSというビジネスミーティングの重要度、規模の大きさを改めて知ることができた。
さまざまな分野からも注目を集めるTGS。今年はNintendo Switchの存在がカンフル剤となったせいか、地に足の着いたコンシューマータイトルが多く見受けられた。VRも、昨年より確実に洗練された技術としてゲームに落とし込まれているような印象を受ける。来年はどういったタイトルが発表されるのか、今回発表された新作の行方を見守りながら楽しみにしたいところだ。
(文=編集部)
・東京ゲームショウ2017公式サイト
http://expo.nikkeibp.co.jp/tgs/2017/
・KONAMI TGS2017特設サイト
https://www.konami.com/games/event/tgs/
・株式会社カプコン TGS2017特設サイト
http://www.capcom.co.jp/tgs/
・株式会社ディースリー・パブリッシャー TGS2017特設サイト
https://www.d3p.co.jp/tgs2017/