プロ野球審判員はなんでも知っている…1試合で数球は判定ミス、試合中に監督が采配を相談
「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画や著作も多数あるジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之氏が、経営側だけでなく、商品の製作現場レベルの視点を織り交ぜて人気商品の裏側を解説する。
プロ野球のSMBC日本シリーズやMLB(米大リーグ)のワールドシリーズが始まった。野球は、今年も数多くの試合でファンを一喜一憂させたが、最後の大詰めを迎えている。
そうした試合の進行を担うのは、野球審判員だ。プロ野球から社会人野球、大学野球、高校野球、少年野球、さらには一般人が行う草野球でも、審判員がいて初めて試合が成立する。
その中で今回は、国内野球の最高峰・プロ野球の審判員に焦点を当て、審判員の目を通した「試合」について紹介したい。
話を聞いた審判員は、平林岳氏だ。かつてNPB(日本野球機構)に所属するパシフィック・リーグの審判員を9年務め、米国3A(トリプルA)でも審判員を務めた同氏は「もっともMLBに近づいた日本人審判」だ。2012年からはNPBの審判技術委員を務める。主な役割は、若手審判員の指導育成だ。取材前日まで、宮崎県で行われた教育リーグに帯同し、試合を進行する審判員の判定を見て、アドバイスをしたという。
日米両方でキャリアを積んだ平林氏の経歴も興味深いので、こちらも後述する。野球に興味のない人はキャリアづくりの参考として、特定のチームに思い入れがあるプロ野球ファンはビジネス記事(スポーツビジネス)の視点でお読みいただきたい。
監督よりも「投手の代え時」がわかる理由
「審判員は、ストライク/ボールの判定が中心の『球審』、アウトやセーフの判定をする『塁審』で役割が違いますが、共通するのは『試合球であるボールを見続ける』こと。たとえば、レフト線やライト線上のフライで、打球の捕球位置がファウルかフェアかの判定のため、打球を追う外野手中心に見ることはありますが、目線の基本は試合球です」(平林氏)
試合球として使うボールは、新品の下ろしたては使わない。表面に塗られているロウを落とし、滑りを抑え、光沢を消して使い勝手をよくするために「こねる」のだ。MLBではミシシッピ川の土をまぶすといわれ、NPBでは砂をまぶすという。