税務調査が入る企業の選定理由
この後、13時には代表取締役は仕事に行き、税理士と調査官2人で調査が進んでいきました。1日目なので16時まで帳簿書類を確認し、特に「まとめ」もなく次の日の調査を迎えました。調査官からの求めもなかったので代表取締役の出席はなく、再び税理士と調査官だけで調査が行われました。15時頃、代表取締役に「そろそろ調査が終わるので来てください」と連絡があり、税理士事務所に出向くと、調査官はすでに帰っていたそうです。
規模の大きくない会社の代表取締役の話を聞かずに、調査で結果が出せるとは思えません。調査経験の少ない調査官に当たったことは、法人にとってラッキーだったと思います。税理士の先生の話を聞いても、会社のことなどほとんどわかりません。兎にも角にも、代表取締役の話を聞くべきです。
基本的に明らかにしないはずなのですが、今回の選定理由について調査官はこう言っていたそうです。
「法人の決算報告書の数値は国税局内のサーバーに保存されていて、売り上げ、所得、経費の数値が同業他社に比べて過大あるいは過少になった場合、自動的に抽出されます」
これについては、内部情報なので解説できませんが、そのようなことを調査対象者に言ったという事実に少し驚きました。
代表取締役の方は、ベンチャーの社長たちとの交流が多く、その中で「赤字の会社には税務調査が来ない」という話をよくされるそうです。なぜ、そのように思うのか疑問ですが、今回の調査では、3期目と4期目は赤字だったにもかかわらず調査となりました。もちろん、黒字のほうが調査をしたときに追徴税額が発生しやすいということはありますが、赤字を理由に調査をしないということはないでしょう。赤字だからといって油断せず、正しい処理を日常的に行うようお勧めします。
(文=さんきゅう倉田/元国税職員、お笑い芸人)