先の衆議院解散・総選挙の引き金になったともいわれる森友学園問題が、再び動き出しそうな様相を呈している。
森友問題をめぐっては、財務省近畿財務局がごみの撤去費用として約8億円値引きして国有地を森友学園に売却したことが焦点となっているが、問題を調査している会計検査院は、この値引き額が最大で6億円ほど過剰だと試算していると報じられた。
調査は継続中だが、会計検査院は4月にも、国有地払い下げに関する交渉記録を近畿財務局が廃棄していた点について、公文書管理法上「不適切」である可能性を指摘しているだけに、調査の結果によっては再び安倍政権を揺るがす政治問題に発展しかねない。
調査結果は11月に公表される予定だが、もし値引き額が過剰であった場合、財務省は国の財政に相当額分の損失を与えたことになるが、広義では「税金の不正支出」ともいえる行為を犯した財務省は罪を問われないのであろうか。弁護士法人ALG&Associates執行役員・弁護士の山岸純氏に解説してもらった。
背任罪に相当の可能性
国や地方自治体の行為、公務員の行為というものは、(重大かつ明白な瑕疵がなければ)あとから取り消されたりしない限り有効とされているので、原則として違法、犯罪となることはありません。
たとえば、「道路を敷く」行為は、各種の手続きを経ていなかったり、実は他人の土地の一部を勝手に通っていたりしたとしても、ただちに違法、犯罪とはならないわけです。
ところが、国などの行為のなかには、一般の国民が行うのと同じ行為もあります。たとえば、国有地を売却する行為、官庁で使用するオフィス機器を購入する行為などです。これらの行為が一般の国民が行うのと同じような私法上の行為であるとするならば、一般の国民と同じ法律が適用されることになります。
では、国有地を売却する際、土地に瑕疵(廃棄物が埋まっているなど)があることを理由に4億円程度を値引きしなければならない場合において、担当の公務員が必要を超えて8億円も値引きして売却してしまった場合、問題があるのでしょうか。