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「軽トラのキャリィが夕陽にばえている!」話題の埼玉の中古車店が語る、オレの写真の流儀

文=編集部
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「クルマ写真がカッコよすぎる」と話題の埼玉の中古車店が語る「軽の価格上昇とコロナ禍」の画像1
田舎の田んぼ沿いのあぜ道にて、夕陽をバックになぜか盛大に“ばえて”いる軽トラ。2006年式スズキ・キャリィ、5MTの走行距離6万5000キロにて支払総額39万8000円也。

 コロナ禍で、“マイカー回帰”という言葉も聞かれるようになった。公共交通機関ではどうしても“3密”の状態になりやすいことから、比較的安全・安心な移動手段として、自動車を使おうというわけだ。そんななか、埼玉県のとある中古車販売業者が、ネット上で話題だ。その名も「オートサロンイイダ」(埼玉県入間郡毛呂山町)。関東郊外の小さな“中古車屋さん”の何が注目されているのか。店舗を訪れてみた。

 現在、中古車販売店の多くは「カーセンサーnet」(リクルートが運営)、「グーネット」(プロトコーポレーションが運営)などの中古車情報サイトに売りたい車両を登録し、大量の写真を掲載している。しかし、たいていは店舗を背景にしていたり駐車場の壁を背景にしていたりと、まあ、要は「店員さんが撮ったのだろうな」と思われる写真がほとんど。日々大量にクルマを仕入れ、それを売りさばいていかなければならない中古車販売業者にとってみれば、プロのカメラマンをわざわざ雇い、見栄えのよい写真を撮って掲載するような余裕はないのである。

 ところが、今回訪れたオートサロンイイダの車両画像はというと……まあ、とにかくカッコいいのである。ある写真は夕焼け空を背景に、ある写真は木漏れ日射し込む森のなかで……。光の角度もきちんと計算された、どう考えてもプロが撮ったと思われる写真の数々に、「なんだこの、写真にこだわりすぎの中古車販売店は!」とネットでも話題となっているのだ。

 Twitterでは、「メチャクチャいい車に見える」「車への愛を感じる」などの絶賛コメントが多く集まる一方、「この写真を撮りにいくために走行距離を稼いでしまって、車両の商品価値が落ちてしまうのでは」といった心配の声も……。

 実際のところ、どうなのか。誰が撮影しているのか。そもそも、なんでわざわざこうした写真を掲載しているのか。オートサロンイイダ店長の飯田裕樹氏に話を聞いた。

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同店のカーセンサーnetページには、ディーラー扱いの新車販売カタログのような写真が多数掲載されている。これが、クルマ好きを中心に大きな話題を呼んだ。
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オートサロンイイダ
住所:埼玉県入間郡毛呂山町市場940-2
営業時間:9:30~19:00(定休日は木曜、第2水曜)
電話:049-276-6123

中古車サイトへの型通りの写真掲載は「5分で飽きてしまう」から、撮影にこだわる

「最近になって急に話題になっていますが、実はこうした写真を撮り始めたのは、カーセンサーへの掲載を始めた7~8年前からなんです。もともと私は写真を趣味にしていたのですが、それぞれのクルマに合った写真を撮影して掲載したほうが、そのクルマを所有したときのことをお客さんが想像しやすいのではないかと思ったんですよ。写真がよかったからとうちの店を訪れてくれたり、そこからご成約に至ったり……というケースもそこそこあるので、一定の効果はあるのではないかと思っています。

 カメラは、今は『Canon EOS-1D X Mark III』と『EOS R6』を使っていますね。もともとずっとCanonを使っていて、その後SONYやオリンパス、FUJIFILMなどいろいろとメーカーを乗り換えたのですが、やっぱりCanonの使い勝手がよくて、戻っちゃいました」

 飯田氏によれば中古車販売業界では、コンパクトデジカメ、もしくはスマートフォン搭載のカメラで、車両状態がわかるように前後左右、インパネ周り、シートを倒したところ……などとルーティン的に1台20〜30枚を撮影してアップする、という業者が9割以上、とのこと。

 しかし、そうした写真は「5分で飽きてしまう」と思った飯田氏は、クルマという、中古とはいえそれなりに大きな買い物をすることになる購入者の“ワクワク感”を大事にしたかったのだという。そうした心遣いが、図らずもネットで話題を集めることとなったわけだが、今回のネットでの盛り上がりを、飯田氏はどう考えているのか?

「一応Twitterを使ってはいるんですが、実はあまり見ないんですよね。だから今回の件については、友人経由で聞いたり、あとはたまにTwitterを開くと通知がすごいことになっていたりして、初めて知りました。まあ悪いことではないですし、素直に嬉しかったです。

 とはいえ、この程度のことで記事にしたいと取材までしていただいて、『逆に大丈夫かな』とは思いましたが……(笑)。ただ、カーセンサーなどの掲載写真にはルールがあって、『画面の一定以上の割合を車体が占めていなければいけない』(要は、ヒキすぎてクルマが小さくしか写っていない写真はNG)などの決まりがあります。本当は、もう少し“攻めた”写真も載せてみたいのですが(笑)」

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飯田氏お気に入りの1枚だという、トヨタ・ラクティスの写真。ストロボをたき、あえて逆光で雨粒を映したというアーティスティックな1枚だ。

オークションで手に入れたクルマの不具合チェックがてら、撮影場所まで“試運転”

 しかし、ここまでの撮影技術を持ち、こだわった写真を撮っているということは、フォトショップなどの画像加工ソフトで、中古車両のキズなどの“不具合”もいい具合にレタッチしているのでは……?などと邪推もしたくなってくるが、「車体にある傷はきちんとどアップで撮って掲載していますし、足回りなどが錆びていたとすれば、むしろそれがちゃんとわかるように撮影しています」とのこと。

 また、ネットで指摘のあった「わざわざ遠くまで写真を取りにいくことによって、走行距離が無駄に増えてしまうのではないか」との声についても、「問題はない」と飯田氏は語る。

「どんなに車両を動かしたとしても、50kmは動いていませんからね。地方でクルマ通勤している人であれば、そんな距離、2~3日で稼げてしまう距離でしょう。あと、撮影のためのこうした移動は、試運転を兼ねているという側面もある。業者が販売する中古車って基本的に、各地で開催される業者オークションで競り落としたあと、会場から引き取る、あるいはクルマの状態次第では修理工場に運んだ後に引き取るんですよ。

 でも中古車というのは、平坦な舗装路での通常運転では発見できないような故障、摩耗、不具合等が隠れていることもすごく多い。そのため、段差を乗り越えたり、交差点を加速しながら曲がったりと、さまざまな条件下で運転し、そうした故障がないかをきちんとチェックする必要があるわけです。そうした一連の作業を行うついでに撮影場所に行き、撮影をしているわけなので、『無駄に走行距離を増やしてしまっている』という指摘は当たらないと思いますよ」

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飯田氏が写真を好きになるきっかけとなったという、かつての愛車・シビックの写真。
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「写真は印刷して手元に置いておくべき」という飯田氏の信念通り、店内には多くのプリント写真が壁に。

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100万円以上かかっても、マツダRX-7をレストアして乗り回したい

 そもそもオートサロンイイダは、飯田氏の父が18年前に開業。飯田氏自身も自動車整備士になるための学校に通った後、4年ほどカーディーラーで勤務経験を積み、この店で働くこととなったそうだ。もとからクルマ好きであったという飯田氏が写真に魅せられたのも、やはりクルマがきっかけなのだとか。

「もともと、僕の父も昔はスポーツカー乗りでして。僕もその影響で、最初に買うのはカッコいいクルマがいいなと思って、スポーツカーに乗っていたんです。最初に買ったのはホンダのシビックでした。車高も高かったし、アルミホイールとフルエアロを付けただけだったので、今考えるとちょっとカッコ悪いんですけどね(笑)。

 その後、日産の180SXに乗り換えたのですが、乗り換える前にせっかくだから写真を撮っておこうと思って、デジカメで構図なんかもよく考えないで撮影したんです。でもあとでその写真を見た時に、『ああ、この時もよかったなあ』って思えて。それが、写真を好きになったきっかけでしたね。だから写真はデータで保管するよりも、印刷して手元に置いておくのがいいと僕は思っています。データだと、目的がないとなかなかそのフォルダやデータにはアクセスしないじゃないですか。でも印刷しておくと、日常のなかでその写真に触れることができますからね」

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将来レストアして愛車にする予定だと飯田氏が語る、往年の名車・マツダRX-7。修復するには「100万以上かかるかも」とのことだが、気長に直していくつもりだという。

 そんな飯田氏は今でもスポーツカーを愛好しており、マツダRX-7の中古車を手元に置き、今後レストアして乗ることを目標としているという。とはいえ、「スポーツカーにも、プリウスのようなハイブリッドカーにも、それぞれよいところはある」とも語る通り、車種に限らずクルマ全般への愛は深いようだ。

15年前には30万で買えたマニュアルのホンダシビックが、いまでは200万円

 そんなクルマ愛をずっと心に抱えながら、中古車販売に携わり続ける飯田氏。しかし今はコロナ禍のまっただなか。この業界への影響も深刻なのではなかろうか?

「いや、それがそうでもなくて。うちの店も、緊急事態宣言が出た2020年4月5月あたりは販売数が落ち込みましたが、それ以降は例年通りまで持ち直した。比較的影響は少なかったと思います。

 最近の業界動向でいえば、軽自動車が高騰している、ということが挙げられるかもしれません。車種にもよりますけど、以前は数万円で仕入れられていたような軽が、今は30万円を超えてくる……なんてことも。長く続く不景気のなかで、車検の費用や重量税、燃費などのランニングコストが圧倒的に安いことが人気の要因でしょうね。

 それからその一方で、スポーツカーのマニュアル車でも大きな価格上昇が見られます。僕が以前乗っていたシビックは、15年前に購入した際には30万円程度でしたが、現在同じものを入手しようと思ったら、200万円程度はかかるのではないでしょうか。こちらは純粋に、数が減りつつあって売り手市場になりつつあるのが要因だと思います。

 その影響か、以前はほぼ価格がつかなかったようなオートマのスポーツカーも軒並み値上がりしていますね。これは、『スポーツカーならマニュアル以外あり得ない!』という昔ながらの考えも持たない人も増えた、というのも大きいのかなと。近頃は、AT限定免許を取得する男性も珍しくないですからね」

 そうした状況下、飯田氏は中古車を買うメリットをこのように語る。

「中古車は、それぞれに魅力がある多くの車のなかから、自分に合った1台をリーズナブルに手に入れる方法としては、有効な手段ではないでしょうか。また写真好きとして言えば、どんなに安くても古くても、クルマを持ちさえすればいろいろな場所に出かけることができ、さまざまな景色が観られ、撮影できるようになるという点も強調しておきたい(笑)。無理のない価格で購入した愛車と一緒にそういう体験する……そのためのお手伝いをできればいいなと考えています」

 オートサロンイイダは、軽トラックと軽自動車、そしてスポーツカーをメイン商品としているとのこと。興味を持たれた方は、“未来の愛車”を探しにぜひとも!

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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