21年度、幅広い業種で増益予想…娯楽・宿泊・飲食は大幅増収、移動等を伴う活動が正常化
製造業主導で来期は増収増益計画
3月12日に公表された2021年1-3月期法人企業景気予測調査は、今年2月下旬にかけて資本金1000万円以上の法人企業に対して行った景気予測調査であり、来期の業種別企業業績計画を予想するための先行指標として注目される。
そこで本稿では、今年4月下旬からの今年度決算発表で、コロナ渦が続く中でも来年度の企業業績計画の好調さが見込まれる業種を予想してみたい。
下図は、法人企業景気予測調査の調査対象企業(大企業)の各調査時期における売上高と経常利益計画の年度見通しの推移を見たものである。まず売上高を見ると、21年度は今年度の減益計画から増益に転じる計画となっている。このことから、決算でも来期の売上高が好調な計画となる業種には注目が集まるものと推察される。
一方の経常利益も、大企業全体で今年度は▲20.2%の減益計画となっているが、海外経済の持ち直しに伴う製造業の牽引により、来年度は+6.3%と増益に転じる計画となっている。このことから、4月下旬からの決算発表では、多くの業種で来年度増益計画が出てくることが予想される中、特に強めの計画が打ち出される業種には注目が集まるものと推察される。
来期大幅増収期待の「サービス」「娯楽」「石油・石炭」「鉄鋼」
以下では、4月下旬からの決算で、来期売上高計画で高い増収率が期待される業種を見通してみたい。下表は業種別売上高計画を今期と来期の前年比で比較したものである。
結果を見ると、21年度は「繊維」「鉱業」「建設」以外の全業種で増収計画となっている。中でも、増収率が高い業種は「娯楽」「宿泊、飲食サービス」「生活関連サービス」であり、今期の2桁減収計画から2桁増益計画となっている。
なお、「生活関連サービス」を詳細に見ると、我々の生活に密着したクリーニング業や理容業、美容業、銭湯、スーパー銭湯、エステティック業、リラクゼーション業、ネイルサービス業、旅行業、結婚相談業、家事サービス業、冠婚葬祭業、等になる。また「娯楽」は、映画館や劇場、スポーツ施設等が含まれる。
したがって、来期は新型コロナウイルスに対するワクチンの普及などが進み、移動や接触を伴う経済活動が正常化に向かうことが想定されている可能性が推察される。
また「石油・石炭製品」については、原油価格の水準が引きあがった影響が大きいことが推察されるが、移動や接触を伴う経済活動正常化により、各種製品の需要回復も見込んでいる可能性がある。一方の「鉄鋼」も、金属市況の回復に加えて、各種製品の需要回復を見込んでいることが予想される。
「生活関連サービス」「娯楽」が黒字転化
続いて、経常利益計画から21年度の業績拡大が期待される業種を見通してみよう。結果を見ると、一部業種で減益計画となっており、これは国際商品市況価格高騰等に伴うコスト増が主因と推察される。また、「宿泊・飲食サービス」は、今期に引き続き来期も赤字計画となっているが、赤字幅は縮小と改善傾向が示されている。
こうした中、20年度に赤字計画も来期は黒字転換を計画する業種を見ると、高い増収計画の「生活関連サービス」「娯楽」となっている。それに続くのが「運輸・郵便」となっている。特に「運輸・郵便」については、新型コロナに対するワクチンの普及が進むことで、空運や鉄道旅客数が正常化に向かう動きに加えて、EC化の進展に伴う宅配需要の増加も寄与している可能性が推察される。
また、今期は大幅減益となった「自動車」も2倍以上の増益計画となっている。背景には、米国や中国における需要回復に加えて、経費削減努力も寄与している可能性がある。
さらに、これ以外にも製造業では新型コロナに対するワクチン普及による経済正常化を期待する「繊維」、原油価格反転に伴うマージン改善や在庫評価損の縮小が予想される「石油・石炭製品」等が大幅増益を計画していることにも注目だろう。
なお、日銀が4月2日に公表する3月短観の収益計画(大企業)は法人企業景気予測調査に比べて聞き取りのタイミングが若干遅いことから、3月短観における大企業の収益計画も期末決算と来期業績見通しを読み解く手がかりとして注目したい。
(文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト)