森友学園問題では、国有地の格安払い下げに対して「根拠不十分」「適切ではない」との判断を示した会計検査院。政府はこれまで「適切に処理されている」と主張してきたことに対して「誤り」を認め、財務大臣、国土交通大臣、そして安倍晋三首相がどう責任を取るか、そして関係省庁職員の処分に問題は移っている。森友問題では安倍首相の縁故者への便宜供与が国家の法令順守を無視して行われた“国家の私物化”という問題であるが、今回は国家財政の使い方という面では極めて重要な、東日本大震災に対する復興資金の使い方についてメスを入れる報告をしたい。
会計検査院は復興資金問題をめぐり、国によるお金の使い方に対して何度か報告している。流用問題について「平成24年度決算検査報告」で、環境省が災害廃棄物(災害によるがれき)の処理の促進のために全国の市町村に配った交付金(補助金)が、「十分な効果を発揮したのか確認できない」という指摘があり、質問主意書(再々)が先の特別国会(2017年11~12月)に提出された。
復興資金は、東日本大震災の被災者救援や被災地復興のために当初約22兆円が予算化された。当時の旧民主党(現民進党)政権は災害復興のために国債を発行して復興資金に充てると方針を出したが、野党であった自民党と公明党に反対され、旧民主党が掲げていた子ども手当(一人当たり月1万円支給)や高速無料化の政策を棚上げして財源を確保した。そして所得税や事業税の増税によって確保した財源だった。
ところが市町村の清掃工場の焼却炉建設費への補助金や林道建設など本来一般会計で定められた予算で支出すべき用途に、省庁が災害復興予算を流用するという問題が発生した。たとえば環境省は、災害廃棄物の処理を所管していたが、被災地復興の基本となる災害廃棄物の処理費を流用していた。
この件に関する質問主意書は昨年6月には作成されていたが、議会開会中でなければ出せないため、昨年の通常国会閉会後は9月末まで棚ざらしにされ、さらに9月28日に開会された臨時国会の冒頭で解散・総選挙となり、結局11月の特別国会まで提出が持ち越された。森友・加計学園問題で国会での論戦から安倍内閣は逃げ続け、約半年も質問主意書という行政監視活動がまったく途絶えてしまった。