災害廃棄物処理費の流用問題とは
災害廃棄物、いわゆるがれきの処理は環境省が管轄し、復興資金全体の中で約1兆数千万円が予算化されたが、その使途をめぐり次のような問題が上っていた。
(1)がれきの総量が当初の推測値からは3割は減ったが、予算はほぼすべて予定通りに使用されていた。当初被災3県のがれきは約2千数百万トンと報告されていたが、最終的には約1800万トンにとどまり、量は大きく減った。その内、宮城県と岩手県からは、広域処理がそれぞれ344万トン、57万トンと合計401万トン必要だとして予算が立てられたが、実際は環境省の発表でも約60万トンに終わった。ところが、当初の過大な予算は、余すことなく使い切られていた。
(2)がれきの広域処理促進のため、交付金のでたらめな支給が行われていた。がれきの処理を3年以内に急いで行い、復興に寄与するという名目で交付金が支給されたが、全国の地方自治体では清掃工場の焼却炉建設費などに使われていた。明らかに目的から逸脱する。
12年3月当時、がれきの広域処理への協力を国が全国の自治体に求めたが、その許諾権を持っていた自治体では、がれきは、放射能汚染の懸念もあり、受け入れに手を挙げるところは少なかった。そこで環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部では、課長名で通知書(写真2)を出し、がれきの受け入れ自治体を増やす条件整備のために、交付金を支給するという方針を出した。
環境省の一部局の通知ではあったが、そのことによって、数百億円の助成金が動いた。ところが、なかには大阪府堺市や富山県高岡地区広域圏事務組合のように、1トンもがれきを受け入れていないのに補助金が支給され、その当時も省庁による復興資金の流用と社会的に大問題になった。
(3)がれきの広域処理の協力は、復興資金からの補助金流用が目的だったのか。協力した「ご褒美」に、廃棄物処理施設の助成を受けた自治体もあった。当時がれきの受け入れに手を挙げた自治体では、放射能汚染の怖れがあるなかで住民の賛否両論が渦巻き、注目を浴びた。ところが受け入れの“美談”の裏で、受け入れた自治体に復興資金からその自治体の諸整備費用にお金が出されていた。結局受け入れ自治体は、表向きは被災地の復興を一刻も早く手伝いたいと表明しつつ、裏ではこっそり復興資金で自治体の施設を整え、被災地の復興の足を引っ張っていた疑いが持たれている