トヨタ自動車グループを抜いて世界2位の自動車メーカーグループとなったルノー・日産自動車・三菱自動車グループのトップに君臨するカルロス・ゴーン氏が、一時は退任をにおわせていたルノーのCEO(最高経営責任者)を続投することが決まった。背景にはルノーの大株主であるフランス政府との確執がある。自身がグループトップのポストにしがみつくため、フランス政府に日産・三菱自を“売る”ことを懸念する声も聞かれる。
ゴーン氏がルノーのCEO退任を示唆したのは、フランスの下院公聴会だった。ルノー、日産、三菱自の3社それぞれの経営責任を明確にする体制にした上で、自身は3社のとりまとめに専念する方針を示したからだ。
ゴーン氏は2016年に燃費不正問題で窮地に陥っていた三菱自を支援するため資本提携し、益子修社長を続投させるとともに、自身は会長に就いた。17年4月には日産のCEO職を西川廣人氏に移譲した。ゴーン氏はルノーの取締役としての任期が切れる18年6月でルノーCEOを退任する意向と見られていた。ゴーン氏自身もルノーの取締役に再任された上で、ルノー、日産、三菱自の3社それぞれに経営責任を持つトップを置き、ゴーン氏は会長としてグループ統治に専念するという経営体制に移行することを示唆していた。
目算が狂ったのがルノーの大株主であるフランス政府の横やりだ。フランスのマクロン大統領は過去、ゴーン氏にルノーと日産の経営統合を迫るなど、ルノー経営への関与を強めたことから両者には確執がある。そして今回、取締役の任期切れが迫るなか、フランス政府はルノー、日産、三菱自の3社連合のあり方を見直すよう要請した模様だ。
フランス政府は15年にも2年以上保有する株式の議決権を2倍に増やすことが可能となるフロランジュ法を使って、議決権を増やしルノーと日産の経営統合を強引に進めようとした。しかし、このときは日産がルノーへの出資比率を引き上げて対抗することを検討するなど、激しい抵抗に遭って断念した。今回はゴーン氏のルノー取締役再任という「最も効果的な人質」を盾に攻勢をかけた。
経営統合も視野に3社のあり方を模索しなければ、ルノーの取締役再任をフランス政府に阻まれるとの危機感を抱いたゴーン氏は、3社の株式保有割合の変更も含めて3社連合のあり方の抜本的な見直しに考えを改める。現在、ルノーは日産に43.4%出資しており、日産はルノーの株式15%と三菱自の株式34%を保有する。今後、3社の経営統合や、持ち株会社を設立して3社が事業会社として傘下にぶら下がる企業連合になるという可能性も否定できない。