ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイは2016年11月に、商品の支払いを最大で2カ月遅らせることができる「ツケ払い」を開始した。
サービス開始当初から、支払い能力の低い未成年などの消費者による「買いすぎ」や「滞納」を引き起こすのではないかと指摘されていたが、実際に支払いを滞納し続けた結果、「法的措置をとる」と督促された消費者が出てきていると話題になっている。
ZOZOTOWNといえば、17年11月22日に全身の採寸を瞬時にできるボディスーツ「ZOZOSUIT」を発表し、今年1月31日にはZOZOSUITによる採寸データを利用したオーダーメイドのプライベートブランド「ZOZO」を発売、2月15日には入力された情報を基に独自アルゴリズムで解析し、顧客に最適な商品を定期的に送る「おまかせ定期便」を開始するなど、ファッション業界の風雲児ともいえる存在である。
そんな飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進を続けるZOZOTOWNのサービスだが、気軽に利用できるがゆえに「2カ月後に払えばいいや」と深く考えずにツケ払いを利用した結果、支払いに苦しむ消費者を生む皮肉な結果となっている。
ツケ払いの裏に隠れたリスクは果たしてどのようなものなのだろうか。ツケ払いの問題点や危険性について、ベリーベスト法律事務所の川﨑公司弁護士に話を聞いた。
未成年が気軽に使えてしまうという大きな問題点
「『ツケ払い』という呼称によるイメージで、ZOZOTOWNが支払いを待ってくれているような印象がありますが、まずその認識が間違っているのです。実際には、ZOZOTOWNからGMOペイメントサービスという後払い決済サービスを行っている企業へ、個人情報と代金の債権を譲渡するかたちになっています。つまり、ZOZOTOWN で買い物をする際にGMOペイメントサービスからお金を借りるといったほうが近いでしょう。
問題点としては、やはり未成年者が安易に使えてしまうことが挙げられます。一般的な分割払いなどはクレジットカードを持っていないと利用できないので、未成年者はそもそも利用できないことが多い。しかし、ZOZOTOWNのツケ払いは未成年であっても簡単に注文でき、しかも2カ月支払いを延ばせるので、よくわからず使ってしまう人も少なくないと思います。
もちろん、『保護者の同意を得て利用するように』といった注意書きは記されていますが、これだけインターネットやスマートフォンが普及している以上、注意書きを無視して利用する人も多いのではないでしょうか」(川﨑弁護士)
「ZOZO」ツケ払いでブラックリストに載る可能性は低い
こういった金銭問題においては、信用情報に傷がつき、お金を借りることができなくなったり、ローンを組むことができなくなったりといった、いわゆる“ブラックリスト”に載るリスクが存在する。ZOZOTOWNのツケ払いのように企業独自の分割払いサービスの場合でも、滞納し続けるとブラックリストに載ってしまうことがあるのだろうか。
「断言はできないですが、結論から言えば、ZOZOTOWNのツケ払いを滞納することで信用情報に傷がつく、すなわちブラックリストに載る可能性は低いでしょう。そもそも、ブラックリストに載るということは、具体的には信用情報機関に自身の延滞、滞納の情報が登録されてしまうことを指します。日本にはCIC、JICC、JBAという3つの信用情報機関があり、このどれかに加盟していなければ信用情報を使えませんが、GMOペイメントサービスはいずれにも加盟していません。
また、こういった信用情報機関に情報を渡すには、消費者本人にその情報をどのように利用するか目的をきちんと説明し、同意を得ないといけません。ところが、GMOペイメントサービスやZOZOTOWNのツケ払いのページを見ても、そういった説明の記載はありません。以上のことから、ZOZOTOWNのツケ払いを滞納したとしても、ブラックリストに載る可能性は低いと考えられます。
ただ、支払いを遅延して訴訟提起され、銀行口座が差し押さえられた場合には、クレジットカードの自動返済ができなくなり、そのままカード支払分も滞納してしまうと信用情報に傷がつきます。カード支払分の滞納が重なれば、ブラックリストに載ることはありえます。また、ツケ払い滞納の結果、自己破産となった場合は手持ちのクレジットカードが使えなくなり、この場合はブラックリストに載ってしまいます」(同)
「ジャパネットたかた」で支払い滞納した場合はブラックリストに載る?
要するに、支払いの際に利用する業者がこの信用情報機関に加盟している場合、支払いの延滞や滞納を行うとブラックリストに載る可能性があるが、ZOZOTOWNのツケ払いの延滞や滞納が直接の原因となりブラックリストに載ることはない、ということのようだ。
それでは、ZOZOTOWNのツケ払いに限らず、「ジャパネットたかた」のような通販事業を手掛ける企業や、そのほかのネットショッピングサイトで分割払いなどを利用し、支払いを滞納し続けた場合、ブラックリストに載ることがあるのだろうか。
「一般的には、銀行や消費者金融、クレジットカード会社、携帯会社などが信用情報機関に加盟しています。たとえば、通販サイトの分割払いなどは支払いをクレジットカード会社が立て替えて、消費者はクレジットカード会社に代金を支払っていく仕組みを取ることが多いです。したがって、クレジットカード支払いを選択し、滞納し続ければブラックリストに載ることはあるでしょう」(同)
通販サイトなどでクレジットカード支払いにしている人も多いだろう。万が一にもブラックリストに載らないようにするためには、どのようなことに気をつけるべきだろうか。
「基本的に、サービスを活用する前にどういった仕組みになっているのか、自分で簡単にでも勉強すべきでしょう。細かい約款などを読んでいる時間はないと思いますが、今はこれだけインターネットが普及していますので、弁護士が解説しているページやサービスのメリット・デメリットをまとめたサイトなどを見ることもできます。また、そのサービスのコールセンターなどに問い合わせをして、『どういったデメリットがあるのか?』と直接聞いたりするのもいいですね。
小学生の頃から金利などのお金の計算を教育することも大事かと思いますが、「後で払えばいいや」と安易にサービスを利用せず、疑問があれば自分で調べてリスクを理解した上で利用するクセをつけておくべきでしょう」(同)
現代は、家から一歩も出なくてもスマホ上で簡単に買い物ができてしまう時代となった。面倒に感じるかもしれないが、後々にトラブルを招かないためにも、自身が利用しようとしているサービスがどういったシステムとなっているのか、きちんと理解することを徹底すべきなのだろう。
(文・取材=A4studio)