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出版業界、書店等まで運べなくなる危機…アマゾン直取引拡大、書店消滅に拍車

文=深笛義也/ライター
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 そのほか、大都市圏ではトーハンはトーハン、日販は日販などと別々に配送しているものを、共同で配送する地区を少しずつ増やしていますし、新聞輸送への出版物の相乗り実験も始めました。ネックになっているコンビニに対しては、食料品や弁当などを配送するセンター便を活用するという案も出ています。ただ、そこで問題となるのは、やはりお金です。センター便や新聞輸送に支払うお金は、出版輸送の金額ではとても足りないということがはっきりしているんです。逆に言えば、これまでの出版輸送が安すぎたと言えるのでしょう」

 さまざまな試みも試行錯誤の段階。出版輸送は崖っぷちに立たされているのか。

「輸送問題を解決するには、まずは足りない運送費を誰がまかなうかを決めることです。取次のシステムを享受してきた出版社たちがその責を負うべきだとは思いますが、今は取次と出版社との間で駆け引きが続いているところでしょう。ただ、出版社が身売りしていく時代ですので、取次の要望に満額回答はしかねるでしょう。それに、小学館グループは昭和図書、KADOKAWAにはビルディング・ブックセンターなど大手出版社の物流会社や中小出版社が活用する出版社の倉庫では、仕分け機能を備えていて、宛名を貼って書店に直送することもできます。

 もし、取次会社からの運賃要請に耐えかねたり、地方の運送会社がもっと撤退していくような事態に陥った場合、出版社も選択を迫られるでしょう。一部書店への直送をし始めるかもしれません。いずれにせよ、出版社は取次機能という“流通経費”に対して、もっと真剣に向き合っていくべきだと思います」

委託配本制度の限界

 アマゾンは新刊書籍等を、取次会社を通さずに直接印刷会社から調達する動きを広げている。現在すでにアマゾンと直接取引する出版社は2300社ほどに上るといわれている。
 
 取次によって支えられる委託制度には、さまざまな批判があった。よく言われてきたのは、書店は商品を自分で選ばず、取次から送られてくる商品を棚に並べているだけであり、他の業種の小売店ではあり得ないという声だ。

「確かに業界では書店は意思ある仕入れをしていくことが大事だと言われています。ただ現状、書籍だけで年間7万点くらい出ているわけです。それ以外に、雑誌やコミックもある。書店の限られた人員で、これを仕入れる、これは仕入れないとすべての商品を判断するのは不可能でしょう。それで、書店の規模や地域特性などに合わせて、取次が配本するというかたちをとってきました。

 しかし、出版市場の低迷と同時に、出版社は売上をなるべく落とさないために委託制度を利用して、出版点数を増やしてきました。たとえば、1カ月に同じ20万部を搬入する場合でも昔は10点で済んでいましたが、今は20点以上つくらないとその部数に達しません。そうやって売り上げ規模を落とさないための出版物が増えていき、限られたスペースである書店では並べきれずに、知名度の低い出版社の本は即返されたり、段ボールを開けずに返してしまうという事態も起こっていました。今は、返品削減が業界テーマでもあり、取次が仕入れ数自体を減らしています。出版社も初版部数がどんどん減ってきてしまい、売れると思い込んで大型書店ばかりに配本をつけるようになりました。中小書店は雑誌だけではなく、そういう面でも厳しい状況にあります」

 出版業界は今、本が運べないという新たな危機に直面しているといえよう。
(文=深笛義也/ライター)

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