出版輸送の運賃が安すぎて、運送会社も出版輸送だけ見れば赤字のところもあります。そのため、取次との値上げ交渉を飛び越えて、出版輸送そのものから撤退していく運送会社もあるくらいです。そこで、取次会社は出版社から頂いている運賃協力金の値上げを、昨年から出版社に打診し始めました。その額は、大手では億単位(年間)、中堅でも数千万円(同)ともいわれています。
また、運送業界全体のドライバー不足も深刻な問題です。出版物は深夜帯に運送することが多いのですが、給料が安いなどの理由でドライバーが特に集まりづらい。この人手不足という問題は運送会社だけでなく、書店をはじめ小売業全般でも起きています。最低賃金は右肩上がりに改定されていますが、それでも書店には人が集まりせん。さまざまな課題・問題を抱えている出版界ですが、こうした人手不足が実は最も深刻な課題としてのしかかってくる可能性もあります」
業界挙げて、さまざまな試み
雑誌や本が消費者の手元に届かなくなるという事態が目前に迫っているわけだが、打開の道はないのだろうか。
「雑誌の発売日というのは、1カ月のなかのある時期に集中しています。給料日とか五十日(ごとおび)とか、お金の動く日は消費が加速されるので、そのあたりに発売日が設定されています。あるいは、同じジャンル、たとえば30代女性向けのファッション誌だったら何日あたりとか、群れをなしている日にちがあるんです。そのため取次会社は、こうしたピーク時の容量をこなせるだけの設備を設置しています。しかし、1カ月に占めるピーク時の割合はわずかにすぎない。要はわずかな日のために過剰な設備を持ち続けなければいけない。
その上、取次倉庫の仕分けと連動する配送や、雑誌の制作現場である印刷会社にも、そのしわ寄せがきているのです。実はこの業量の偏りは長年、取次や印刷会社が出版社に対して改善要望を出していましたが、ずっとスルーされてきたのです。しかし、こういう状況になってようやく出版社が理解を示し、発売日を移動するなどの業量の平準化に取り組み始めました。
また、運送会社からの要望などで一昨年から休配日を増やそうという動きが始まっています。2018年度のスケジュールも出ましたが、前年度より1日休配日が増えました。休配日の増加については、輸送現場からは歓迎する声がアンケートで得られています。