セブン&アイ・ホールディングス(HD)の創業家への大政奉還のXデーはいつか――。
コンビニエンスストアのセブンイレブンを一代で国内業界トップの座まで育てた、鈴木敏文前会長(現名誉顧問)の電撃的な退任から2年。業績面でも、セブンイレブン・ジャパンは好調を維持し、イトーヨーカ堂は表面的には回復しており、井阪隆一社長体制に今のところ悪評はない。
しかし最近、セブン&アイHDの祖業であるイトーヨーカ堂を創業した伊藤雅俊名誉会長の二男である伊藤順朗取締役常務執行役員が表舞台に登場するケースが多くなってきた。いよいよその日が近くなってきたのか――。
決算発表会で登壇した「次の社長候補」
4月上旬に開かれたセブン&アイHDの決算発表会。ひな壇には井阪社長、後藤克弘副社長、そして伊藤常務が並んだ。伊藤常務は、中国・九州地区地盤の総合スーパー(GMS)、イズミとの提携を主導しており、この案件を説明するための登壇だが、マスコミを前にした場に不慣れなためか、質疑応答などでぎこちなさが残る。それでも、父親である伊藤名誉会長譲りの生真面目さがそこはかとなく伝わってくる。会見の表舞台に立つのは昨年の決算発表に続き今回で2度目になるが、伊藤常務の露出が増えてきたことで、にわかに業界ではセブン&アイHDのトップ人事が取り沙汰され始めている。
長くセブン&アイHDをみてきた、ある大手食品メーカーの幹部は「早ければ来年、遅くても再来年あたりに井阪社長が会長となって、伊藤常務が社長に昇格するのではないか」と観測する。
伊藤常務はすでに今年6月で60歳を迎える。国内大手企業では60歳前後が社長就任の“適齢期”とみられる傾向がある。伊藤名誉会長もすでに93歳の高齢、子息が社長になる姿を一目見たいと思うのは親心であろう。
整い始めた伊藤常務昇格の環境条件
伊藤常務の社長昇格への材料はそろっている。鈴木氏の電撃的な会長退任の決定打になった理由は諸説あるが、表向きは鈴木氏らによる井阪社長の首のすげ替えの失敗が原因といわれている。井阪社長はその際、防衛上、創業家に後ろ盾になってもらった恩義もある。