動きとしては、最初はHVが伸び、次にEVが伸び始め、最後にPHVが伸びてきた。12年はHV、EV、PHVの順番だった。今はEV、PHV、HVの順番で、PHVがEVを抜きそうな勢いだ。EVは中所得者や低所得者、PHVは中所得者以上で売れている。EVのほうが、小型車が多いという理由もあるだろう。EVのSUV(多目的スポーツ車)は見当たらないので、向いていないと考えられる。
16年にノルウェーで一番売れたエコカーは、三菱自動車「アウトランダーPHV」、次がトヨタ自動車「RAV4」のハイブリッド、以下、VWの「e-ゴルフ」「ゴルフGTE」など。売れ行きは混戦状況で、EVの保有でいえば、17年5月時点で日産「リーフ」が2万7500台で圧倒的だった。次が「e-ゴルフ」で1万6000台なので、やはり先行者が強い。
ただ、今後はPHVが広がる可能性もあるので、EVだけではどうか。HV中心のトヨタは、ディストリビューターに話を聞くとEVが欲しいと言っていた。
エコカー普及の決め手
――ノルウェーでエコカーの普及率が圧倒的に高い理由は、電力コストが安いからだけなのか。
塩地 ノルウェー政府がかなりのインセンティブを出したために、EVが普及した。付加価値税(VAT)は25%だが、電動車ではゼロにしており、登録税(日本では自動車取得税)もゼロにしている。高速道路は無料。フェリーも無料。道路税はほかのガソリン車に比べて15%安い。都市部の駐車場は無料。公共の駐車場にある充電設備も無料。カンパニーカーの税金は半額。
充電設備でいえば、17年時点で国内に1819カ所ある。1カ所に複数の機器があるので、全部で7872台分。そのうち、7027台が公共の充電機器なので無料だ。新車を買うのは20代後半からだが、若者が維持費のことを考えて、本体が高くても電動車を選んでいる。国民が電動車を選ぶようになって、国内のガソリン使用が減り、政府は北海油田で採掘した石油を以前よりも輸出できるようになった。
例外は、雪の多い山岳地方で、馬力の大きいクルマが必要なので、EVは難しい。豪雪地帯もHVかPHVのようだ。ノルウェーでは2030年までに、エコカーが80~90%になるだろう。
CO2削減策は一つではない
――CO2の排出量を考えるとき、「Well to Wheel」(井戸から車輪まで)という概念がよく用いられる。ガソリン車なら、油田から油をくみ上げ、精製してガソリンをつくりだし、クルマの車輪を動かすまでを意味する。そして、このすべての過程で発生するCO2を合計して排出されるCO2を算出する考え方だが、この概念についてどう思うか。
塩地 CO2の排出量だが、どうやって計算するのか、よくわからないところがある。数式を尋ねても誰からもはっきりした答えが出てこない。石炭火力発電といっても、日本と中国では全然違うだろう。
――ノルウェーから学ぶべきは、日本もエコカーを増やすと同時に、再エネを増やす必要があるということなのか。
塩地 日本は再エネの発電コストがまだ高いといわれているので、なかなかうまくいかないのが現状だ。しかし、CO2を減らすというゴールにたどり着く道は一つではない。HVの燃費をもっと良くする方法もあるだろうし、それが今までは効果的だった。普通のガソリン車の燃費を良くするのも一つだ。走るクルマをEVのみにするだけが解決策ではない。策はいくつもあって、それを総合的に進めていくべきだ。
中国やインドのあとを追うのではなく、日本の得意な技術を生かせば良い。例えば、クルマが走れば走るほど街中の空気がきれいになるような発想があっても良い。
(構成=横山渉/ジャーナリスト)