経営陣と投資会社の泥沼抗争が続いていた保育園大手、JPホールディングス(HD)は6月28日、名古屋市のホテルメルパルクNAGOYAで株主総会を開いた。
会社側が提案した取締役8人の選任を求める議案で、荻田和宏社長以下6人の再任を否決した。荻田氏の賛成率は36.06%と半数を大きく下回った。一方、発行済み株式の27.41%を保有する筆頭株主の投資会社マザーケアジャパンの坂井徹代表を含む取締役2人を選任する株主提案は可決された。坂井氏の賛成率は63.56%だった。
取締役から荻田派の役員が一掃されたため、会社提案の2人と株主提案の2人、計4人の経営陣(ボード)となった。新社長には会社側と筆頭株主の双方が支持する古川浩一郎氏が就いた。古川氏を取締役に選任する議案の賛成率は97.69%に上った。
古川氏は1985年、慶應義塾大学商学部を卒業し、大和証券に入社。2000年2月にジェイ・プランニング(現JPホールディングス)に転職。創業者で前社長の山口洋氏のもとで同年6月に取締役に就き、経営の中枢を歩いていた。荻田社長体制下では日本保育総合研究所取締役に転じ、経営の本流から外れていた。
混乱の発端は1年前にさかのぼる。山口氏に近い株主が取締役の任期短縮などを求める株主提案を提出し、提案に反対する荻田氏ら経営陣との対立が表面化した。山口氏側は臨時株主総会の開催を請求。17年11月の臨時株主総会で株主提案は否決された。
18年1月、山口氏は保有株の大半を売却。マザーケアジャパンが27.41%を保有する筆頭株主となった。別の株主が荻田氏の社長解任を求めて臨時株主総会の招集を請求し、3月に2度目の臨時株主総会が開催されたが、そこでも株主提案は否決。
しかし、マザーケアジャパンは攻撃の手を緩めなかった。4月に別の株主が荻田氏の解任を求め、3度目の臨時株主総会の招集を請求。総会の運営で不正があったとしてマザーケアジャパンがJPHDを提訴するなど、抗争は泥沼化していた。
定時株主総会前は「再任は五分五分」との見方もあったが、結果は荻田氏が惨敗した。マザーケアジャパン以外の株主も、経営の混乱を収拾できない荻田氏に「ノー」を突きつけたということだ。
「洋菓子のヒロタ」の運営会社も社長解任
「洋菓子のヒロタ」と北欧輸入雑貨「イルムスジャパン」を運営する21LADYは6月27日、東京・千代田区の麹町共同ビルで株主総会を開き、創業者の藤井道子社長を解任した。
33.40%を保有する筆頭株主の藤井社長と、16.83%を保有する第2位の株主の投資ファンドのサイアムライジングインベストメント1号代表社員、米道利成氏の対立が発端だ。米道氏は17年6月から21LADYの取締役に就いていた。
サイアムが今年4月、藤井氏を含む21LADYの取締役(うち1人は社外取締役の米道利成氏)に加え、新たに3人の社外取締役を選任すべきとの株主提案を行った。一方、会社側は藤井社長を含む取締役4人の再任案を提出した。
会社提案の取締役4名選任の件(第1号議案)で、藤井社長は43.50%の賛成しか得られず再任されなかった。洋菓子のヒロタ取締役の北川善裕氏(賛成率97.29%)、イルムスジャパン常務の小原敬氏(同97.29%)、社外取締役の米道氏(同97.17%)の3人は選任された。
株主提案の取締役3名追加選任の件(第3号議案) で安部秀之氏、久保孝文氏、鈴木陽子氏の3人はいずれも賛成率55.59%で選任された。
取締役は再任、新任合わせて6名。サイアム側が4人と多数派を形成し、サイアム代表社員の米道氏が新社長の椅子を奪った格好だ。
米道氏は1997年に経営破綻した山一證券出身で、食品会社などを経営のかたわら17年3月にサイアムを設立した。17年4月、21LADYの大株主だった投資ファンドから株を買い取り、16.83%を保有する第2位の株主に急浮上。そして、わずか1年で21LADYを手に入れた。
藤井氏は2000年、21LADYを設立した女性起業家だ。02年に民事再生法を申請した「洋菓子のヒロタ」を再生させて、その名を高めた。だが近年、ヒロタは業績不振が続いていた。投資ファンドへの相次ぐ第三者割当増資で乗り切ってきたが、最後は新たに登場した投資ファンドに寝首を掻かれ、創業した会社を追われた。
なお、藤井氏は、日本郵政とNECの工事部門が独立したNECネッツエスアイの社外取締役だ。6月20日に株主総会を開いた日本郵政では旧姓の「広野道子」の名前で96.67%の賛成、同21日に株主総会を開いたNECネッツエスアイでも同じく広野道子として96.1%の賛成票を得て再任された(編注:NECネッツエスアイは得票率を下一ケタまでしか公表していない)。
(文=編集部)