今週行われた四国最大の夏祭りである徳島市の阿波踊り。今年はその最大の見せ場となる「総踊り」の中止を市側が決定した。それに反発した「阿波おどり振興協会」が別会場で自主的に強行開催したことから、社会的にも大きな話題となった。
私も8月14付当サイト記事『阿波踊り、遠藤市長の間違った判断でブランド毀損…来場者激減→巨額の経済的損失か』で、「経費削減を図るために中止すべきは、メインブランドである南内町演舞場での総踊りではなく、サブブランドのなかでももっともチケット販売率の低い市役所前演舞場である」と論評した。
この記事を受け、市が総踊りを中止したのはビジネス的な合理性ではなく、政治的な思惑からではないかという情報が寄せられた。
4演舞場行われる阿波踊り、目玉は総踊り
前回記事では、4つの演舞場から1つ減らすという案を経済合理性の観点から解説した。まず、17年の阿波踊り最終日(8月15日)の第2部(午後8時30分~10時30分)の演舞場ごとのチケット販売率は、概ね次のようなものだった(市観光課のまとめによる)。
・南内町(総踊り会場):100%
・藍場浜:50%
・紺屋町:50%
・市役所前:30%
この実績から、私は「もっとも集客力の低い市役所前演舞場を廃止すべきだった」と指摘した。阿波踊りをブランド的観点からみると、メインブランドは総踊りで、他の3会場はサブブランドと見ることができる。「メインブランドを潰してしまってどうするのか」というのが、私の論点だった。そして、「観光資源の活用という観点からは、その目玉である総踊りを取りやめしようとした市長の判断には大きな疑問が残る」と、結論付けた。
匿名のメール
前回記事に対して直接感想をメールなどでもいくつかいただいた。そのなかで、私の切り口と異なる8月16日にいただいたメールが興味深いものだったので、ここで紹介したい。そのメールの送り主は匿名(以下、「Aさん」とする)で、「徳島市の内実を伝え聞いているものとして、メールをさせていただかずにはおれませんでした」と、始まっていた。
Aさんは、総踊りの中止について「簡潔に申して、これは『経済』の問題ではなく、汚い『政争』なんです」と主張している。そして、中止を実質的に決定した遠藤彰良市長は2016年3月に初当選しているが、「2年前に就任した今の市長は、長年、徳島市に巣くっていた『既得権益者(とだけ申しておきます)』と、手を組まなかった」(Aさんのメールより)という。
「既得権益者」が誰なのか具体的に明らかにされてはいないが、登場人物から役割を当てはめる「プレイヤーズ・セオリー」からは、阿波踊りを昨年まで主催していた徳島市の観光協会と、今回総踊りを強行自主開催した「阿波おどり振興協会」だと推察される。
市観光協会は赤字を4億円以上累積させたとして、今年3月に徳島市が破産手続きの開始を徳島地方裁判所に申し立てている。
「その結果が、これです。まず協力を拒み、俺の協力なしにやれるもんならやってみなと挑発し、失敗させ、孤立させて」
Aさんの指摘は、総踊り中止の決定は、遠藤市長が「既得権益者」の追い落としを図り、その動きに対する反発が総踊りの強硬自主開催のエネルギーとなっていると読むことができる。