マクドナルド復活の影響
ここまで、モスバーガーよりも店舗数が少ないハンバーガー店の動向を見てきた。これはもちろん重要な意味を持つが、同じかそれ以上に重要となるのが店舗数業界1位の「マクドナルド」(約2900店)の動向だろう。マクドナルドは現在復活を遂げているが、それとモスバーガーの客数の減少は無関係ではない。
マクドナルドは、14年7月に期限切れの鶏肉を使用していた問題が発覚し、客離れが起きた。客離れは長らく続き、鶏肉問題前も含め、客数は15年12月まで32カ月連続で前年を下回った。「マクドナルドは終わった」と見る向きも少なくなかった。
しかし、16年に入ってから客足は回復するようになる。客数は今年6月まで30カ月連続で前年を上回っている。なお、7月の客数は残念ながら前年を下回ってしまったが、既存店売上高は7月まで32カ月連続で前年を上回っており、連続上昇記録は今もなお続いている。
マクドナルドに客足が戻ってきた理由はいくつかあるが、特に新商品の投入と販促が大きく貢献した。しかも、従来とは異なる手法を採用し、どん底から這い上がるために適したかたちで打ち出した。それが功を奏した。
たとえば、16年2月から同社初となる、新商品バーガーの名前を公募し販売するという施策を打ち出した。これは、ほかでは見られない斬新な取り組みとして話題となった。同年12月からは同社初となる、レギュラーメニューの人気投票企画「第1回マクドナルド総選挙」を実施した。17年8月からはマクドナルドの愛称が「マック」と「マクド」のどちらのほうがより愛着があるかを決める対決キャンペーンを実施し、それに合わせて新商品も投入した。どちらも大きな話題を呼ぶことに成功している。
これらは一例にすぎないが、このようにマクドナルドは“同社初”となる施策を数多く打ち出し、その多くがほかの飲食店でも行っていないような新しいものだったため、その斬新さが大いに受けることとなった。
こうした施策は、斬新すぎて失敗するリスクもあった。ただ、どん底から這い上がるには、多少のリスクは覚悟しなければならない。マクドナルドは、あえてそのリスクをとり、結果的にそれが功を奏したといえるだろう。
このように、最大手のマクドナルドが復活を遂げたほか、多くの競合チェーンが店舗網を拡大し、海外発のプレミアムハンバーガー店が続々と日本に上陸する大乱世の市場の中で、モスバーガーは客離れで苦しんでいる。こうした状況下で、復活販売やコラボといった施策をモスは打ち出してきたわけだが、どれもすでにどこかで実施されたことがあるようなものばかりで、パンチ力に欠けた感が否めない。
モスバーガーが客離れの状況から脱却するには、マクドナルドのように、これまでに行われたことのない斬新な施策を打ち出す必要があるといえるだろう。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)
●佐藤昌司 店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に従事。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。