カジュアル専門店チェーンのストライプインターナショナルは8月1日付で、三越伊勢丹ホールディングス元社長で日本空港ビルデング副社長の大西洋氏を社外取締役に迎えた。
大西氏の就任によりストライプの社外取締役は、ソニーの元最高経営責任者(CEO)の出井伸之氏、資生堂の元副社長の岩田喜美枝氏と合わせて3人となった。延期が続いている株式上場に向け、コーポレートガバナンス(企業統治)の強化につなげたい考えだ。
2016年3月、社名をクロスカンパニーからストライプインターナショナルに変更。同年内の東京証券取引所上場を目指していた。
だが、若い女性に人気の「アースミュージック&エコロジー」だけに依存した経営体質を変え、土台づくりを優先させるとして上場を延期。国内外で積極的なM&A(合併・買収)を進めてきた。
創業者の石川康晴社長兼CEOはM&A案件が一段落した後、「第4世代テックアパレル」を宣言した。ユニクロやZARAのようなグローバルSPA(製造小売り)が第3世代アパレルだとすれば、第4世代アパレルはITを駆使したプラットフォーム事業を加えた新しいビジネスモデルだ。「第4世代テックアパレル企業として18年11月をめどに上場したい」と公言していた。ところが、これも延期した。
石川氏が流通専門誌「販売革新」(商業界)の18年5月10日付インタビュー記事で、再度の延期を明らかにした。
「上場延期を決めた理由について、ソフトバンクと合弁で今年2月にスタートしたインターネット通販モール『ストライプデパートメント』が立ち上げ直後で不安定なこと、グローバル戦略の鍵を握る中国事業が赤字であることを挙げた」
ストライプは18年2月、ソフトバンクと連携し、ファッションEC(電子商取引)モール「ストライプデパートメント」を開業した。資本金は4億4000万円でストライプが77.8%、ソフトバンクが22.2%を出資。国内のウィメンズブランドを中心にスタートし、海外のブランドを次々と導入した。
6月、米国の「マークジェイコブス」を皮切りに、7月にはフランスの「ニナリッチ」、8月にイタリアの「ディースクエアード」の販売を始めた。フランスの「エムエム6メゾン マルジェラ」も19年春夏物から販売スタートし始める。
ストライプデパートメントは初年度に600ブランド、取扱高16億円、3年後に2000ブランド、取扱高100億円を目標にしている。3点まで自宅で試せる試着サービスや、AI(人工知能)チャットボット(自動会話プログラム)を活用したスタイリストによるウェブ接客などを打ち出している。
日本発のファッションECモールは、「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」が圧倒的なシェアを持ち、ファストファッション(最新の流行を採り入れながら低価格に抑えた衣料品)ECを掲げる。
後発のストライプデパートメントは、ハイブランド(クオリティの高いブランドという意味)を集積することでゾゾタウン1強体制に戦いを挑む。
上場延期の裏事情
ストライプは中国や東南アジアを中心に海外展開も進めていく。17年9月に中国・上海に新タイプの大型店「アースミュージック&エコロジートーキョー」をオープンした。自社ブランドだけでなく30以上の他社ブランドも扱っている。
とはいっても、ストライプデパートメントも中国事業も道半ば。2つの事業の成長を見極めたうえで、株式を公開することにしたというわけだ。
だが、上場を延期した理由は別にある。「上場できる財務体質ではなかった」(IPOに詳しいアナリスト)との見方がある。
ストライプは18年1月期の決算公告で初めて損益計算書を公開した(従来は貸借対照表のみ)。それによると、売上高は919億7200万円。営業損益は15億900万円の赤字、最終損益も14億4600万円の赤字である。同期のグループ連結売上高は1330億円。226店を新規出店し、期末店舗数は1456店になった。出店攻勢が利益に結び付いていないということだ。これでは株式上場は厳しいだろう。
石川氏は百貨店業界の豊富な知識を持つ大西氏の起用について、「新規事業や海外事業を拡大し、企業価値向上の一翼を担うことを期待している」と語っている。業績不振の責任を取るかたちで三越伊勢丹HD社長の座を追われた大西氏は、新天地のストライプ社外取締役として汚名返上できるのだろうか。
(文=編集部)