約15年ぶり再ブレイクのDA PUMPに、「モノが売れない」日本の製造業は学ぶべきだ
しかし、当の本人たちがどう思い、何を言おうとも、当時、商業的に成功していたのはEXILEのほうだ。当時のDA PUMPの発言は単なる負け犬の遠吠えにしか聞こえないほど、その差は残酷なまでに歴然としていた。
このことからわかることは、高い技術だけでは売れないということだ。一般的傾向として、技術を追求する人たちは、素人である一般人のニーズを度外視して、自分たちの目線だけで技術を追求してしまう。そうなると、もはや一般素人には理解不能な域に達してしまう。技術追求の暴走だ。
「売れる」ためには、「おもしろい」と思ってもらうことが必要だ。言い換えれば、「感動」を与えることだ。感動の伴わない技術は、いくら本人たちが「すごいんだぞ!」と意気込んだところで、受け入れてもらえない。つまり、売れない。
高い技術は、これ見よがしに「見せる」ものではなく、さりげなく「使う」ものである。感動を下支えするようにさりげなく使われている技術は、表ににじみ出てきて、さらなる感動に結び付く。
DA PUMPの『U.S.A.』も、ジャージのような出で立ちでコミカルに踊っているが、高いダンス技術があるからこそ見ていておもしろいのだ。そして、所々で一般人がとても真似のできない高度なダンスを入れているので、よく見るとすごいのである。コミカルに歌うISSAの歌も、ファルセット(裏声の一種)を多用するEXILEや口パクだらけのアイドルグループしか知らない若い人たちほど、「この人、すごい!」と言って感動しているのである。
多くの企業が陥っていることも同じ
考えてみると、業績が芳しくない企業も、同じようなことに陥っていることが多い。たとえば、日本の多くの製造業は、いまだに「いいものをつくれば売れる」と思っているように見える。「いいもの」とは、自分たちが考える「いいもの」だ。確かに、日本の製造業は間違いなく高い技術を持っており、それに誇りも持っている。それでも売れないものは売れない。
新製品には決まって新機能が追加されるが、もはや使いきれないほどの機能が付されていて、かえって使いづらくなってさえいる。これなど、消費者のニーズを度外視して、技術の追求が暴走している例だ。
かつて、ソニーがウォークマンを開発しようとしたのは、創業者のひとりである井深大氏が、出張中の機内でも大好きなクラシック音楽を高音質で聞きたいと思ったのがきっかけだった。しかし、最初は取締役会で大反対された。その大きな理由は、「技術力を誇るこのソニーが、なんで今さら再生専用機をつくらなきゃいけないんだ」ということだったらしい。それでも、井深氏はユーザー目線を貫き通し、ある意味創業者のゴリ押しでウォークマンを開発したのである。今であればトップの暴走だのガバナンス不全などと批判されそうだが、その後のウォークマンの大成功は周知の通りである。
「売れる」ための条件は「感動」だ。感動を与えるための一手段として高い技術がある。その高い技術も、人知れずさりげなく使ってこそ、さらなる感動につながる。
(文=金子智朗/公認会計士、ブライトワイズコンサルティング代表)